岩手日報社のNIE県内全校アンケートで、2018年度、新聞作り(制作)を行う学校は小学校91%(275校)、中学校87%(131校)、高校35%(27校)、特別支援学校47%(7校)だった。小学校は学習や学校行事のまとめが多く、中学校は生徒会・委員会活動や文化祭のコンクールなどの取り組みが盛んだ。

新聞作り、小中盛ん 「学習まとめ」に有効

 中学校は、指導する教員数「6人以上~全員」が43%で小学校の28%、高校の12%と比べ格段に多く熱心さが表れた。

 新聞の形態(複数回答)は個人94校、学級80校がほぼ同数で、内容は「体験学習や学校行事のまとめ」110校に「学級や学校の課題や話題」86校が続く。制作理由に文化祭を挙げる学校が多く、学級新聞、学級の課題や話題が小学校に比べ多い結果に反映した形だ。

 一方、効果は「見られる」「やや見られる」が計95%に上るが、「ほとんど見られない」が5%と小学校の1%に比べ割合が高い。制作しない学校は「作る時間がない」を理由に挙げる。

 日本新聞協会認定NIEアドバイザーの女鹿芳文・県教委学校調整課主任指導主事は「新聞作りは書く力、表現力などばかりでなく、複数の考えをすり合わせ学校生活やクラスを見直す効果もある」と強調。「記事の書き方やレイアウトなど、3年間を見通し段階的にスキルを上げることで短時間で作れるようになる。活動が充実すれば、生徒、教員の力につながる」と助言する。

 小学校は、ほとんどの学校(267校)で個人新聞を作り、学級、学校新聞は計127校にとどまる。内容は学校行事254校、学習まとめ241校が多数。99%が効果を感じ、特に向上が認められる力として書く力、表現力、学習の深まりが、それぞれ234校、205校、162校が多い。

 同アドバイザーの菅野亨・岩手大付属小副校長は、新聞作りの目的が「生活新聞」から「学習新聞」に移行している点を説明し「資料を調べ、学び直し、言葉を選び構成を考え表現する学習新聞は学びを深める」と評価。「年間計画を立て取り組むことで、思考力、論理力を育み、手ごわい問題も解けるようになる」としカリキュラムマネジメントを勧める。

 高校は、委員会や部活動が中心。特別支援学校は学校行事や学習まとめで表現力や対話力、書く力をつけている。

 
 

盛岡聴覚支援学校 復興・防災学習で制作

自然災害についてまとめた新聞を復興・防災学習報告会で発表する盛岡聴覚支援学校中等部の生徒

 盛岡市の盛岡聴覚支援学校(石川敬校長、幼児・児童・生徒47人)の中学部16人は、復興・防災学習を個人新聞にまとめた。

 テーマは、1年生が自然災害の仕組み、2年生が災害時の情報収集・活用、3年生は災害対策について。各自、地震や台風、雷、大雪などに絞って調べ、岩手日報の記者から新聞作りを学んだ後、一人一人が1枚に仕上げた。3・11を前に復興・防災学習報告会で12日に発表。廊下に掲示する。

 台風の仕組みを調べた1年の山根乙華さんは「長い文章を分かりやすく、短くまとめるのが難しかった」とし、雷を調べた畠山和夏さんは「絵や図、写真を多く使い、みんなに伝わるように工夫した」と振り返った。

 千葉信子教諭は「要約や説明文の学習になった」とした上で、生徒が新聞を通じ社会に触れる重要性を強調。「身近な話題や問題など、子どもに合わせることで特別支援学校でも活用は可能だ。図解や写真も多く教材として有効」と新聞活用の効果も説く。

 

調査結果を読んで

日本新聞協会NIEコーディネーター・関口 修司さん

高い意識、継続につなげて

関口修司さん

 NIEの全国大会開催地・岩手県の学校の意識の高さを実感しました。

 まず、アンケートの回答率95%。岩手県にNIEが根付いている証しです。新聞作りの歴史と伝統のある地域であることは知っていましたが、新聞作りとともに新聞活用にも取り組んでいる学校が60%にも上り、どちらかでも実践している学校を合わせると91%と、驚くばかりです。その効果をほぼ96%の学校が実感していることもうれしい限りです。

 当然のことですが、NIEは新聞を読んで終わりではありません。新聞を読む先にある学習の狙いの確かな達成に目標があります。新学習指導要領では資質・能力の育成に重点が置かれますが、本調査で効果を実感した「読む力」「書く力」「表現力」の向上や「社会への関心の高まり」、「学習の深まり」などは、まさに教育改革の方向と一致するものです。

 新聞活用の場面は、小学校は「授業」、中高は「朝学習」や「HR」が中心でした。そのことから、多くの学校でカリキュラムの変更をせずに無理せず実践していることが分かります。これは岩手のNIEの特長と言えます。

 新聞をスクラップし要約や感想などを書く「NIEタイム」の活動も28%の学校で行われています。頻度を問う設問はありませんが、全国でNIEタイムを実施し学力向上等の成果を上げている学校の多くは週1回程度を継続しています。時間が確保できない学校は、家庭学習の課題にしているところもあります。また、新聞を確保するために、数日前の新聞を持ち寄ったり、地方財政措置等で学校図書館に複数紙配備された新聞を活用したり、廉価な学校教材価格で購入したりしているところもあります。続けるためには「無理せずこつこつ」が大切です。

 今回の調査で、特別支援学校での取り組みも注目されます。生活単元学習などの自立と社会参加を狙う活動では、新聞に接することが、地域社会の一員である意識を育むと確信するからです。

 働き方改革真っただ中。日常の授業だけでも精いっぱいで、NIEを始めることは難しいと感じている先生方も多いと思います。しかし「社会に開かれた教育課程」の具現化のためには、社会と学習をつなぐことが必要不可欠です。まずは先生が世の中の出来事を子どもたちに語ることから始めてみてください。

 動きだすまでは確かに一手間かかりますが、動きだしてしまえば二手間分楽になるのがNIE。先生も授業に手ごたえを感じるはずです。

 せきぐち・しゅうじ 都内の公立小学校教諭を経て北区の小学校長を歴任。06年からNIEタイムを導入し、区内の全公立小中学校が取り組む「新聞大好きプロジェクト」につなげた。16年から日本新聞協会NIEコーディネーター。63歳。東京都出身。


 【NIE県内全校アンケート】県内の小中高、義務教育学校、特別支援学校全573校を対象に、2018年度のNIE実施状況などについて聞いた。回答率は95%。義務教育学校は前期(1~6年)を小学校、後期(7~9年)を中学校として集計した。