八幡平市の安比高原スキー場のてっぺんで先週末、今冬一番の寒気を体感した。ゴンドラ乗り場の気温表示は氷点下16度とある。山頂は体を突き上げるような風と雪。気分は同30度以下だ

▼これほど寒いとスキーの滑りが悪くなることを初めて知った。冬タイヤもカチカチに凍り付いた路面の方が、氷雪が解け出している時より滑りにくいものだ。同じ理屈だろう。ほうほうの体で温泉に飛び込んだ

▼湯船で一息ついて辺りを見回すと、中国語とおぼしき会話が飛び交っている。日本語を求めて耳を澄ましたが、あのグループも、この親子連れも、どうやら中華圏らしい。他国に身を置くような錯覚を味わった

▼頃は春節(旧正月)。花巻空港には、台湾に続き中国・上海と結ぶ国際定期便も就航した。旅行先に真冬の岩手を選んでもらったのはうれしい限りだが、この荒天はこりごりだろう―と思いきや、そうではない

▼彼ら、彼女らは、寒風吹きすさぶ屋外に浴衣にサンダル姿で飛び出し笑顔を振りまく。ご当地の当たり前が当たり前でない体験は、自分も観光客の立場で何度となくしているはずなのに忘れているのが情けない

▼「岩手には北国の魅力が全部ある」と来県した中国東方航空幹部は言う。「当たり前」こそ魅力を秘める。拡大するインバウンドを「気づき」の機会にしたいものだ。