先日タクシーにて。行き先を告げると、運転手はすぐ分かってくれたが、目的の会社の前を素通りした。「過ぎましたよ」と話すと、「すみません」に続き、言い訳が始まった

▼「この会社は2カ所にあって、普通はあっちを指すんです」と繰り返す運転手。しまいに「10人中9人は別な方で降ります」。そこまで言います?-の思いを飲み込む。後で確認すると、運転手が向かっていたのは同業の別会社だった

▼田坂広志著「仕事の技法」は、対話で重要なのは「言葉による表層対話より、(何気ない)表情や動作から伝わる深層対話」と説く。言葉以外のメッセージは、相手だけでなく、自分も無意識に発している時があるから注意せよとも

▼運転手に当てはめてみる。弁解を「繰り返す行為」は深層対話に入ろう。表向き謝ってもメッセージは別物。間違いに気づかないまま、乗客に責任転嫁するかの姿勢では、プロとは呼べまい

▼タクシーに乗ったまちでは今秋、ラグビーワールドカップ(W杯)が開かれる。国内外から大挙する観客は、公共交通機関を使う。接客マナーの徹底は周知されているはずだが、浸透は半ばの感がする

▼「仕事の-」は結びで、相手に敬意を持って接することの大切さを訴える。言葉でなく心。訪れる人を笑顔にするおもてなしには、深層対話こそ大事にしたい。