2011年3月の東日本大震災の後方支援拠点となった遠野市。その歴史を刻む一つの場所が役割を終えた。約8年間、地域住民や避難者が心を通わせた市内唯一の仮設住宅団地・希望の郷(さと)「絆」=穀町=が9月末で完全閉鎖された。

 同年冬の初訪問時のことを鮮明に思い出す。木のぬくもりにあふれ、中庭がある開放的な造り。談話室に広がる笑顔-。住民は気持ちの整理がつかない中でも、突然の来訪者を温かく迎えてくれた。

 昨年の遠野着任以降も、度々同団地を訪ねた。転出者が増え、傷みも目立つようになった。取材では長引く避難生活に抱くさまざまな葛藤を聞いたが、苦楽を共にしたからこその笑い話も教えてもらった。「ここでの絆は一生もの」。今年2月、最後の退去となった80代女性が語った一言に、熱いものが込み上げた。

 未曽有の大災害が、結果として生んだ人々の絆。そこからは、誰かに支えられ、誰かを支えて生きていく地域社会の本質を改めて感じさせてくれた。遠野と被災地がつながった大切な場所の記憶をしっかりと胸に刻み、今後の取材に生かしていきたい。

(小野寺 隼矢)