東日本大震災からの公共工事にめどが付き「令和」という新時代にラグビーワールドカップ(W杯)も開かれる。2019年は、復興に向けた歩みに力強さが加わる契機だと思っていた。

 10月13日未明に本県に最接近した台風19号は沿岸部に甚大な被害を与えた。三陸鉄道や再建を果たした事業所、住家などが破壊され、貴い命も奪われた。人々が懸命に積み上げたブロックを突き崩すような大災害に、ぶつけようのない怒りと切なさが込み上げた。

 宮古市築地の自宅裏で土砂崩れに巻き込まれて亡くなった木村徹さん(59)の家族は、ショックと悲しみの中、大切な思い出を全員で話してくれた。

 家族を心から愛し、店長を務める居酒屋で常連客との会話を楽しんでいたこと。初孫誕生と家族旅行での幸せそうな笑顔、川柳で岩手芸術祭の部門最高賞を受賞した喜び-。昨今は事件・災害犠牲者の匿名化が議論されるが、木村さんが生きた証しを「男性(59)」と記号だけで伝えることは決してできない。

 同店にはノートが置かれ、故人を慕う人々の言葉が続いた。こんな悲しい別れを増やしてはいけない。啓発を含めた災害報道の意義をかみしめ、献杯した。

(刈谷 洋文)