1人で取材をしていると、岩手、葛巻両町で日程が重なり掛け持ちするケースがある。素早く写真を撮影し、後から電話で概要を聞いて記事にする。だが、対面することの大切さが身にしみた取材があった。

 12月初旬、東日本大震災の遺族を取材するため、大槌町を訪れた。まちは新たな建物や災害公営住宅の完成が相次ぎ、少しずつ復興が進んでいると実感した。

 一方で、2017年に住宅再建を果たした同町赤浜の東久恵さん(60)が語った言葉が忘れられない。

 「自宅を再建するために、家族みんなで必死になって働いた。だけど、家が完成したら張り詰めていた糸が切れてしまった」

 震災以降の大きな目標としていた自宅の再建後、東さんは虚無感にさいなまれ、体調を崩してしまった。今は生活も落ち着きはじめ、平穏を取り戻しつつあるが、対面しないと分からない心の変化があった。

 震災から間もなく9年。内陸部でも被災地に心を寄せ続けている学校や団体が数多くある。概要を見ただけで「例年通りの内容だ」などと高をくくらず、20年も「人」と直接向き合っていきたい。

(菅川将史)