山田高(宮学校長、生徒107人)1年生31人は9、10月、津波の石碑と東日本大震災の教訓を追う本紙連載「碑(いしぶみ)の記憶」を学習材とした復興・防災学習を展開した。生徒は記事や地域住民の話を通じ、先人が残した思いや命の大切さを次の世代に伝える意義を見いだし、自ら「語り部」になる思いを新たにした。

 復興・防災学習は総合的な探究の時間22時間で行われた。山田町の大沢、織笠、船越、船越・田の浜の4地区に残る石碑を取り上げた「碑の記憶」4編が教科書。生徒は、記事から先人が石碑に託した教訓や地域住民が震災後に取り組む活動を読み取った。

 実地研修は、8班に分かれ実施。1班2カ所の石碑を巡り、記事に登場した住民の話を聞いた。田の浜を訪れた佐藤想(しいな)さんは「石碑に書かれた昔の人の思いや震災経験者から学んだ教訓を広げていきたい」と次世代に伝える意識を高めた。

 記事や実地研修による学びは、新聞やデジタル地図グーグルマイマップにまとめた。プレゼンテーションのスライドは基本的に▽問いの設定▽実地検証(石碑の現状確認、語り部との交流)▽考察▽まとめ(新聞、マップ)▽終わりに(課題と提言)-の順で制作。10月末、成果発表会を開いた。

 石碑の風化を課題に挙げた堀合純奈さんと佐々木海音(かのん)さんは「震災や石碑、防災に対する考えが変わった」とし「石碑の文章は古くて読めない。町に現代語訳した看板や広報への掲載、避難訓練で生かすことを提案したい」「語り部の話や石碑の言葉を交え、津波の教訓を伝えたい」と強調。上沢知征さんは「次世代に伝えるために過去の津波被害をしっかり勉強したい」と意欲を見せた。

 同校は、今回の学習を来年度も継続し3年間を通じた探究を行う予定だ。

 一連の授業には、岩手日報社など4社が協力。本社記者は明治、昭和、チリ地震の大津波を当時の紙面を使い解説。新聞やグーグルマップの制作も指導した。IBC岩手放送は碑の記憶の仮想現実(VR)動画で各石碑、グーグル担当者がマップの特性を紹介。NTTドコモはタブレット端末を無償貸与し学習を支えた。


時間軸で地域と関わる

担当教諭に聞く

 「碑の記憶」を使い復興・防災学習に取り組んだ岩舘巧磨教諭と菊池拓人教諭に、学習の狙いや効果を聞いた。

(聞き手 NIE・読者部 礒崎真澄)

 -「碑の記憶」を使った利点は。

 岩舘「生徒が時間軸で地域に関わることができ、文字を通じて探究を深めた」

 菊池「新聞を使うことで伝える重要性や文章を読む大切さを認識させられた」

 -どんな力がついたか。

 岩舘「地域で生きている意識が高まり、考えや思いを言葉にする力がついた」

 菊池「成果発表では『語り部として伝えたい』との発言が多かった。復興・防災を自分のこととして考えるようになった」

 -複数のメディアと取り組んだ。

 岩舘「発信のプロに接しリアルで生徒にも教員にも刺激になった。生徒は、タブレットやスライドの使用で、さまざまな機器が受け手のツールではなく意識を持ち発信するツールということを認識した。学校だけではできないメディアリテラシー(情報を見極め、理解する能力や発信できる能力)につながる授業だった」

 菊池「新聞やグーグルマップ、プレゼンソフトなど発信する選択肢は多いと生徒は実感した。生きていく中で生かしてほしい」

 -この手法の応用策は。

 岩舘「内陸でもメッセージ性の高い碑は多い。空間で捉えることも可能で、未来のまちづくりを考える学習などに使えると感じた」