新トレ@陸自岩手駐屯地

 自衛隊岩手地方協力本部は、任期満了退職予定隊員対象の研修に岩手日報社のNIB講座「新トレ(新聞トレーニング)」を取り入れた。民間企業などへの再就職を前に、新聞を活用した情報収集力、会話力、文章力の習得が狙い。受講者は正確で幅広い情報の獲得や会話、文章作成に新聞が生かせることを実感。新しい道に進む自信を深めた。

退職予定隊員研修 文章、会話の技も学ぶ

教わった読み方のこつを生かし、10分間でどれだけ紙面を読み進められるか挑戦する受講者

 講座は滝沢市後の陸上自衛隊岩手駐屯地で10月初旬に開催。来年3月末に任期を終え退職する20、30代の隊員32人が受講した。

 テーマは「新聞は社会人の教科書」。講師を務めた岩手日報社員は、世の中の動きを知る媒体として有効な点を解説した上で▽効率的な新聞の読み方▽記事を会話に生かす手法▽簡潔な記事の書き方を生かした分かりやすい文章-をワークショップを交え展開した。

 新聞は詳しく多種多様なニュースを掲載。記事を要約しニュース価値の大小を表す見出しと重要な要素を盛り込むリード(前文)を追うことで短時間に情報が得られる。ニュースの種類で分かれた紙面構成を覚えれば、どこに何が書いてあるか見当が付き速読が可能だ。「効率的な読み方」で受講者は説明を受けながら1面から最終面まで紙面を繰り「10分読み」に挑戦した。

 記事を会話に生かす講義は、当日まで3日間配られた岩手日報を活用。4人一組で関心のある記事を1人三つ紹介した。「もうすぐ子どもが生まれる。幼児教育無償化が気になった」「消費増税で沿岸被災地にメリットはあるのか」など記事を選んだ理由と感想・意見を語り合い、「全員に知らせたい記事」を一つ選び全体発表を行った。

 記事の書き方を生かした文章術のポイントは▽主語・述語を明確にし要点を簡潔に▽情報を取捨選択▽受け手を意識▽「短く、やさしく、正確に」が分かりやすい文章の基本-など。報告書の作成に取り組んだ。

 第9高射特科大隊第2中隊の姉帯珠希(みずき)さん(21)は「大きなニュースだけでなく、細かい情報を扱っているのが新聞の良さ」と再認識していた。

 講座を企画した自衛隊岩手地方協力本部岩手地域援護センターの保科圭三センター長は「再就職を控えた隊員たちが新聞から情報収集する力を身につけ、コミュニケーション能力の向上を図るのが今回の狙い。自衛官として働いたことを誇りに訓練・教育で培った能力を新天地で生かしてほしい」と受講者にエールを送る。


情報分析力を鍛える新聞

横田紀子司令インタビュー

 第9特科連隊長兼岩手駐屯地司令の横田紀子1佐に、新聞による情報収集の意義などを聞いた。

(聞き手 NIE・読者部 礒崎真澄)

「新聞を読むことは情報の分析力を鍛える」と話す横田紀子1佐

-自衛隊員にとって、情報収集の必要性や重要性は。

 「情報を取り、分析し、行動につなげるため、世論や国内外の情勢をつかまなければならない。事実は一つだが伝え方はさまざま。幅広く情報を得て分析することが重要だ」

-隊員育成に長く携わってきたと聞く。情報収集能力に新聞は役立つか。

 「敵と対峙(たいじ)する際、各方面から情報を集め、分析し、必要な情報にたどり着く。ダイレクトに入手できる場合もあるが、本当に正確か見極めることが大事だ。複数の新聞を読み、時間の経過による変化も見比べることは、情報の本質を分析する力に通じる」

-新聞、テレビ、ネットなどメディアは多種多様だ。

 「新聞は、決められた枠の中にエキスを詰め込んでいる。同じ事象でも新聞社ごとに扱いが異なり比較して読める。一方、ネットは興味のある情報にヒットしやすいが、正否を見極めるには分析力が必要。力がないとだまされる。読解力を培う上でも新聞は有効」

-新聞が役立った経験は。

 「朝礼でタイムリーな話をすることで、隊員といろいろな話ができる。一方、上司との会話で『読んでおけば良かった』という失敗もあった。新聞はコミュニケーションを取る上で重要な情報収集ツールだ」

-新しい一歩を踏み出す隊員の研修に新聞講座を取り入れた。

 「読み方、掲載されている情報を学ぶ目的。世の中には、さまざまな情報がうごめいている。一つ一つ分析し、自衛隊で培った力を生かしてほしい」

 よこた・のりこ 防衛大学校卒。97年入隊。富士学校特科部戦術班長、陸上幕僚監部人事教育部人事教育計画課企画班長などを経て19年8月から現職。45歳。佐賀市出身。


読み方学び視野広がる・安東昌太さん

 通常経験できない新聞の読み方や、記事を使ったコミュニケーションの方法を学ぶことができ、視野が広がった。金融系企業への就職を目指しており、今回の講座で3日間配られた新聞では経済関係の記事を中心に読んだ。就職したら、ぜひ新聞を購読したい。ビジネス文書の書き方もとても役立つと感じた。

国際面、経済情勢に注目・高橋海生さん

 普段、ニュースに触れるのはSNSやテレビが中心で、入隊後は新聞は実家で時々ながめる程度だった。受講して紙面の構成や編集について詳しく知ることができ、新聞への関心が高まった。仕事柄、国外情勢が気になるので、国際面に注目したい。就職を控え、経済情勢を把握するためにも新聞が役立つことを再認識した。

話題作りに役立てたい・下平萌香さん

 新聞はテレビなどのニュースに比べ難しいイメージがあり、あまり読んでいなかった。今回の新トレで幅広く細かい情報を得られることを知った。記事の大事な部分が分かりやすいように見出しを工夫していることや、読み方のこつを学ぶことができた。仕事をする上で話題作りにも役立ちそうなので、関心を持って読んでいきたい。

社会を広く知るツール・菅野大輝さん

 講座を受け、紙面や記事の構成、見出しの意味を学び、効率的な新聞の読み方を身に付けられた。新聞は社会情勢を幅広く知るツールだと思う。さまざまな年齢の人と話をする上で、有効だと感じた。また、文章の書き方の講義では、相手に伝わる分かりやすい文章を書くために、文や段落を意識する大切さを学ぶことができた。

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