「想像以上にかかってしまった」。取材では、時の流れの早さにしばしば驚く。その日も寒い中、つい話し込んでしまった親子に礼を言うと「おかげさまで楽しかったです」と屈託のない笑顔を返された。そんな時、急に胸が熱くなる。

 じっくり話すと、思いがけず相手の心の内に触れることがある。山田町の80代女性。震災を振り返るはずが、20代の頃愛した人に話が及ぶほどの冗舌ぶり。だが急に、言葉がやんだ。見ると、ただ一点を見つめ、頬に一筋の涙。亡くなった親族を思い、話はその後もゆっくりと続いた。

 思い出の扉をたたくこともあるのだろう。取材を終えた方が、話の続きを電子メールで送ってくれた。被災経験や息子さんへの伝承の思いがつづられ、最後に一言。「一部ですが話せて良かったです」。思いも寄らない言葉に心が満ちた。

 今は亡き人生の大先輩が言っていた。「大事なことをみるには、今目の前にいる人と全力で向き合うこと」。入社前、当時学生だった私と3時間も向き合い、諭してくれた。長ければいい訳ではない。だが、時間も労も、愛も惜しまなかった、その先輩の姿を追いたい。

(加藤菜瑠)