ラグビーのワールドカップ(W杯)は閉幕しても、44日間にわたり列島を包んだ熱気は冷めやらない。最も番狂わせが起こりにくいとされる、この競技で「ワンチーム」を掲げた多国籍の日本がベスト8と歴史を塗り替えた活躍はもちろん、他国・地域の国歌や伝統歌を歌う日本のおもてなし、それに対して外国勢に日本流の「お辞儀」が広がる-といった国境を超えた無形レガシー(遺産)が語り続けられているからだろう。

 県内に目を向ければ、国際統括団体ワールドラグビーの年間表彰で釜石市がキャラクター賞を受賞した。東日本大震災で被害にあった小中学校の跡地に釜石鵜住居復興スタジアムを建設し、復興を通じてラグビーの価値を広めたことが評価された。復興W杯成功の証左と言えよう。

 台風19号が国内を直撃した翌日、10月13日は忘れ難い日となった。横浜市ではボランティアが清掃活動に力を尽くして日本対スコットランドの開催にこぎ着け、不戦勝での8強入りを回避。国内外のファンの心を震わせた日本の劇的勝利を実現させた。

 一方、釜石市では戦わずして1次リーグ組最下位が確定したカナダ代表が泥かきのボランティアを買って出た。これで思い出されるのは、同じく復興を冠した2016年岩手国体だ。軟式野球の神奈川チームは台風10号で大きな被害を受けた久慈市で災害ごみの撤去に協力した。「少しでも復旧の力になれたら」。野球選手の思いは「試合よりも大切なものがある」と汗を流したカナダ選手に通じる。

 日本代表の躍進でもたらされた空前のブームを日本ラグビーの発展につなげたい。まさに「鉄は熱いうちに打て」なのだが、気になるのは、国内の盛り上がりの受け皿が定まっていないことだ。日本協会は21~22年シーズンからトップリーグ(TL)3部制を提示する一方、同協会の清宮克幸副会長は21年秋の発足を目指してプロリーグ構想を打ち出す。組織内でかみ合っていない印象を受ける。

 早い時期に方針決定が求められるのは、釜石鵜住居復興スタジアムの事後活用策とも密接に関連しているからだ。W杯12会場をプロチームの拠点とする清宮構想通りなら、同スタジアムもその一つ。既に仮設スタンドの取り外しが始まり、6千人規模に戻るのだが、清宮副会長は参加要件に「1万人程度のホームスタジアム確保」を挙げている。

 20年度以降、年間約3500万円が見込まれる維持管理費は整備費と異なり、国と県の補助金はあてにできない。W杯の有形レガシーをどう残し、活用していくか。日本協会は地方都市の次の姿も描いた上で方針を示してほしい。