国内外から9千人超が参加して先月初めて開かれた「いわて盛岡シティマラソン」。中心市街地の道路を埋め尽くして走る様子は圧巻で、市民ランナーの裾野の広さを実感させた。県内の他の大会も大勢の参加者で盛り上がりを見せている。

 マラソンは、「見るスポーツ」としても人気が高く、五輪でも花形だ。2時間超のレースの中にさまざまな要素が凝縮され、見る者の胸を打つ。五輪史には数々のドラマが残る。

 その五輪マラソンに異例の措置が取られる。来夏の東京五輪では、競歩とともに、開催都市と遠く離れた札幌市での開催が決まった。

 事の発端は、ドーハでの世界陸上のマラソンや競歩で、真夜中のレースにもかかわらず棄権者が続出したことだ。この深刻な事態を受け、国際オリンピック委員会(IOC)が突如、札幌開催の検討を発表した。

 寝耳に水の小池百合子東京都知事が反発したのは当然だろう。暑さ対策でコースに遮熱性舗装を施し、テスト大会を兼ねたマラソングランドチャンピオンシップを実施。多額の出費を行っている。

 対立する中で、東京都、IOC、東京五輪・パラリンピック組織委員会、政府の「4者協議」が開かれ、小池知事は「同意できないが、妨げはしない」として札幌開催で決着した。

 選手の健康を優先する観点からは変更は理解できる。札幌も夏は暑いが、酷暑が予想される東京に比べれば安心できよう。

 ただ、決着までの経緯や手法には違和感を覚える。明らかになったのはIOCの強権的な体質だ。「権限がある」「決定済み」などと有無を言わせない姿勢に終始したことは、五輪運営に対するイメージを損ねたのではないか。

 そもそもマラソン、競歩が会場地変更を余儀なくされたのは、開催時期が7~8月とされたためだ。米国テレビの放映権料に支えられる五輪の事情がある。

 真夏開催であれば暑さは分かっていたはず。もっと早く手を打てなかったか。開幕1年を切っての変更は、選手や競技運営者に負担や混乱をもたらす。もちろん決まった以上、札幌市など関係者には万全を尽くしてもらいたい。

 会場変更により追加経費が発生する。どこが負担するかが焦点だが、いずれにせよ五輪経費がまた膨らむ。歓迎ムードに水を差しかねない。

 開催決定以来問題が次々と発生している東京五輪。「復興五輪」への被災地の思いと人々の協力姿勢を高めるためにも、IOCなど「4者」は協調して復興の趣旨を盛り上げてほしい。