用の美として息づく伝統的工芸品。11月は普及を推進する月間だ。中心イベントとなる第36回伝統的工芸品月間国民会議全国大会は、あす5日まで本県で開かれている。手仕事の価値を次代へ。作り手の思いを共有し、ファンを広げる好機にしたい。

 大会は19年ぶり2度目の本県開催となる。3日からは滝沢市のアピオを会場に、展示・販売や実演、ワークショップなど多彩な内容を繰り広げている。関連イベントがさまざま組まれ、若手職人らにスポットを当てた企画も注目が集まる。

 ライフスタイルの変化や安価な工業製品の普及で、暮らしの身近にあった工芸品との距離感は変わってきた。「作っても売れない」「担い手が少ない」と、市場縮小を悩む声も多い。だが、手をこまねいているわけではない。

 技を守りつつ、今の暮らしに取り入れられるデザインを意識し、情報技術を活用して発信力を高める。「和の趣がクール」と海外でブームになり、訪日外国人客の関心を引くなど新たな風も呼ぶ。作る工夫に売る努力、ものづくりに掛けるプライドをいかに伝えるか。各地で模索が続く。

 観光など地域資源と結びつけ、消費者との対話に活路を開く好事例がある。奥州市、平泉町、一関市で工芸品や食品製造に携わる23社が工房を開放するイベント「オープンファクトリー五感市」(8~11日)は、2年目を迎える。

 訪れる人はエリア内を巡り、現場の雰囲気を五感で味わいながら地元産品のファンに。交流を通して職人も刺激を受けており、日常の見学・体験受け入れ態勢を充実させる工房も出てきた。

 30~40代の若手が運営を担う。中心メンバーの佐々木優弥さんは41歳、秀衡塗の翁知屋(平泉町)五代目。先進地に学び、地域の仲間らと共通認識を育んできた。「自分のところさえ良ければいいとの発想では立ち行かなくなる。私たちが今頑張らないと、つながらない」との思いだ。

 工芸品などモノに宿る物語に魅せられる愛好者は多い。各地のクラフト催事は盛況で、盛岡市の岩手銀行赤レンガ館で本年度開催している企画展は毎回にぎわう。工芸品と人が出合う場として、市民向け講座やカフェなど職人発の新たな取り組みも生まれている。

 若い世代との接点をさらに広げてほしい。全国大会では滝沢、盛岡をはじめ二戸、奥州各市から約2千人の児童生徒が参加。職人との触れ合いから地域の産業を知り、感じることも多いはずだ。

 工芸品は地域のブランド資源。価値を伝え続けることは地域の誇りにも通じよう。大事につないでいきたい。