小屋を建て、風呂釜を取り付け、取水はホースをつないで近くの沢から-。東日本大震災直後の陸前高田市。2人の大工が復旧に励む消防団のため入浴施設を作った。作業1日の手際の良さだった

▼2人を送り出したのは盛岡市の工務店杢創舎(もくそうしゃ)。社長の沢口泰俊さんは、工場で機械加工した部材を現場で組み立てる住宅と違い、職人がかんな、のみなど昔ながらの手道具を使う家造りにこだわってきた

▼業界で沢口さんは少数派になる。国内の大工は、2015年で約35万人。この20年で半減した。これからも高齢化や人手不足で減少は避けられない。効率を高める機械化は当然と言える

▼「今の建築を否定はしない。ただ技術は千年以上、人から人に教えられてきた。伝統は人でしか伝わらない」と沢口さん。同社は職人24人のうち10人が20代。若い人材を育てるようになったのは、先の入浴施設の経験がきっかけという

▼豪雨が暮らしを根こそぎ奪う。被害が激しく広範囲なほど復旧にかかる人、物は不足する。急を要するときに頼りになるのは、限られた道具や資材で応急措置、修繕ができる「人」の力だ

▼沢口さんには若手育成の傍ら、目標がある。「街なかに高齢職人の居場所をつくりたい」。誰も災害と無縁でいられない。ものづくりの達人がそばにいたら、こんなに心強いことはない。