文化の日のきょうは「まんがの日」でもある。漫画を文化として認知してほしいという願いから、日本漫画家協会と出版社が2002年に定めた

▼この日は故手塚治虫さんの誕生日。今年は生誕91年、没後30年に当たる。「ブラック・ジャック」「火の鳥」など戦後を代表する名作を手掛けた手塚さんは常々、講演などで自作のテーマは「生命の尊厳」と語っていた

▼1978年に厚生省(当時)が設けた「生命と倫理に関する懇談会」の委員となった時には、生命全体の大切さや命の神秘を教える教科書があってもいいのではないかと主張した

▼最初のページは楽しげに飛ぶチョウの絵、めくるとクモの巣に引っかかって死んだチョウの絵になる。子どもが生命について考えるきっかけになると考えた(岩波新書「ぼくのマンガ人生」より)

▼手塚さんは終戦の45年8月15日の夜、灯火管制が解除され街灯がこうこうと輝く大阪の街を見て「あと数十年は生きられる」と実感。この体験が漫画を描く支えとなり、作品には「生命のありがたさというようなものが、意識しなくても自然に出てしまう」ようになったという

▼いじめや虐待が子どもと隣り合わせの現代。40年以上前に生命の尊厳を伝える授業の必要性を唱えた手塚さんの作品に接して、再びその思いに触れることは無駄ではないだろう。