新聞講座と授業連動 情報活用力を鍛える
新トレ@上野法律ビジネス専門学校
盛岡市材木町の上野法律ビジネス専門学校(高橋勝徳校長)は、総合ビジネス学科1年後期の授業に岩手日報社のNIB講座「新トレ(新聞トレーニング)」を導入した。毎月1回、本社社員が講師を務め、引き続き週1回、同校教員が授業を展開。学生は、新聞活用や新聞制作で、情報を入手し発信する手法を学んでいく。

新トレは毎週1コマ90分の「キャリアアップ」の授業で実施。目的は、新聞から情報を得て時事、自己分析、業界研究に対する理解・認識を深め、文章力を身に付けること。情報収集能力と発信力を育成する。新聞の読み方からスタートし「(志望)企業訪問新聞」を制作、3月にプレゼンテーションを行うのが最終目標だ。
毎月1回の本社社員の講義に続き、翌週から同校教員が毎週1回授業を行うのが特徴。授業は冒頭30分で教員が時事問題などについて解説し、続く20分で学生が新聞を読み、40分で要約と感想を書く。講義と演習をつなげ、新聞から情報を得て発信する力の定着を図る。
テキストは講座・授業日の朝、学校に届く岩手日報。10月10日に行われた第1回講座は、本社記者が岩手日報紙面の構成を説明。短時間で効率的に情報を入手し広くニュースに接する方法を説いた。講義を受けた翌週からは、各学生が関心の高い記事を紹介し合う「まわし読み新聞」や記事の要約を教員が指導した。

今月6日の第2回講座では写真撮影方法と取材手法を手ほどき。今後、「伝わる文章の書き方」「新聞を使ったプレゼン技法」などの講座、授業を展開し「(志望)企業訪問新聞」の制作を目指す。
授業を担当する同校教員の工藤正剛さんは「一般教養を身に付け、企業・業界動向を知るために新聞は有効だ。志望職種や就職のチャンスを広げる」と狙いを語る。
報道写真の技伝授

第2回講座は本社報道部の太田代剛専任部長(写真報道、震災報道担当)による写真講習。カメラの構造から黄金比=図=を利用した撮影方法まで詳しく解説。報道写真の撮り方をパンフレットや広報の写真撮影に生かす技法を説いた。
はじめに、シャッタースピードや絞り(被写界深度=ピントの合う奥行き)のコントロール方法を説明。動きの速いスポーツや背景をぼかしたポートレートの撮り方を紹介した。
露出や焦点距離についても具体的にアドバイス。アングルに関しては▽アイレベル▽バードアイ(俯瞰(ふかん))▽ドッグアイ(仰瞰(ぎょうかん))▽横位置▽縦位置―の効果を説明した。新聞紙面上の写真を示しつつ、一眼レフカメラやスマホを使い指導し「ドッグアイで撮ると、ドラマチックな写真になる」と強調した。
構図に関しては、黄金比を使い主要被写体を中心からずらすことで落ち着いた構図になる仕組みを説明。学生は「同じ被写体でも全く違った印象を受ける。普段から練習したい」と意欲を見せた。
広い視野、発想力育む
上野法律ビジネス専門学校で新トレと新聞を活用した授業を担当するビジネス課教員の工藤正剛さん(42)に、専門学校における新聞活用の意義などを聞いた。
(聞き手 NIE・読者部 礒崎真澄)
―新トレを取り入れた狙いは。

「十二分に新聞を活用した就職活動を学生にしてほしいと考えた。以前、新聞を読み知識を蓄え、関連づけて考える力をつけた学生が大手企業の面接をクリアした。東南アジア情勢の変化から当該企業の進出可能性を話したことが評価されたという。就職面接における新聞の力を確信した出来事だった」
「合同説明会で話を聞いた企業に就職する流れができているが、専門学校生への門戸はまだ狭い。ネットでは数え切れないほどの企業が検索できる。だが、学生は生かし切れていないのが現状だ。ネットの情報を取捨選択するためにも業界の動向や一般教養の知識が必要になる。新聞は良いアイテムだ」
―専門学校生が新聞を読む必要性は。
「スマホやネットは、接触する情報が興味のある分野に限られ、自発的に視野を広げるのが難しい。新聞の特長は興味の外側にあるニュースが自然と目に入る一覧性。企業が求める広い視野、関連づけて考える力、発想力は、そこから生まれる。豊かな人生にもつながる」
―新トレの講座と毎週1回の授業を始め1カ月半。学生に変化は見られるか。
「私は新聞の読み方を本で覚えたが、学生が講義1コマでそのスキルを身に付けられたことが大きい。今では、毎時間、要約や感想の充実に真剣になっている。ビジネスチャンス、地域活性化に結びつく情報が多いことに気付き、情報に触れることが楽しくなってきているようだ。経済の学習などにつなげていきたい」
知識が付き文章力も向上・英井小雪さん
新聞は言い回しが難しいというイメージがあり今まで読んでいなかった。今回、実際に読んでみると、思った以上に知識が身に付くと感じた。文章を書くときの参考にもなり、話の幅も広がる。就職活動に役立てたい。写真の撮影方法も勉強になった。角度や撮り方を変えるだけで違いが出ることや、伝えたいことを意識した撮り方や、利用する際の選び方が重要だと実感した。
興味深いアングルや構図・田村匠真さん
読み方を学び抵抗感が消えた。講座と授業で記事に触れる機会が増え、世の中の動きや地域の取り組みを深く知る機会になっている。八戸から通っているが、岩手と青森の地元紙のニュースの切り口が違い、読み比べるのも面白い。文章力もついた。記事は多種多様な言い回しで、将来、公的文書を書くときに役立ちそうだ。写真講習も興味深く、露出やアングル、構図など参考になった。
新聞の存在ぐっと身近に・佐々木楓倫さん
子どもの頃から新聞に興味があったが、読み方が分からず遠い存在だった。今回の講座を通じて、見出しを読めば記事の内容が分かり、隅々まで読まなくても新聞を読んでいることになると知り、身近な存在になった。こつを教わったことで関心がある記事以外にも目がいくようになり、視野の広がりを感じる。表現力の勉強にもなるので今後の就職活動に生かしていきたい。
「なぜ、どうして」考え読む・石橋敦也さん
新聞は毎日購読するようにしている。読み方を教わり、必要な部分をピックアップしキーワードをつかむなど多くの記事を短時間で読む力がついた。授業を受け、全国、世界の出来事に関心が高まり「なぜ、どうして」と考えながら読むようになった。難しいと感じる表現もあるが、意味を知るのが楽しい。自分の考えをまとめる訓練にもなり、就職面接や入社後の仕事に生かせそうだ。
若い世代も楽しめる紙面・高橋那歩さん
新聞は祖父や父が読むものというイメージで、父に勧められた記事や1面を眺める程度だった。読み方を教わり、今まで読まなかった種類の記事にも目を通すようになり、紙面には自分たち若い世代でも面白いと思える記事が多いことが分かった。就職活動の情報収集にも活用できる。難しい表現や知らない言葉が多くて最初は読むのに苦戦したが、語彙(ごい)力の向上にもつながっている。。