萩生田光一文科相の「身の丈」発言で、公平性を巡る議論に火が付いた大学入学共通テストへの英語民間検定試験導入は、2024年度以降に見送られた。

 延期表明は、受験に必要な「共通ID」の申し込み受け付けが始まる当日。萩生田氏は記者会見で「自信を持って受験生に薦められるシステムになっていない」と述べた。どの口が言うかと、開いた口がふさがらない。

 つまり各方面からやまない疑問や不安に応えるすべを、文科省自体が持ち得ていなかったということだろう。担当閣僚として、当の受験生を筆頭に、関係各方面を振り回した政治的責任は免れまい。

 文部行政への信頼が大きく揺らぐ事態に至っては、高校教育との接続を旨とする大学入試改革の原点に立ち返り、制度の全体を精査する必要もあるのではないか。

 英語民間検定試験は、全国の国公私立約5200校の校長でつくる全国高等学校長協会が文科省に実施延期を要請するという異例の経過をたどった。同省が認可した6団体7種類の民間試験で、全都道府県に会場を設けるのは2団体。他は都市部に偏る。

 高校3年時に受験したうち最大2回分の結果が出願大学に送られる仕組みだが、受験料が2万円を超える試験もある。地方居住者には会場までの交通費や宿泊費も必要。本番前の「試し受験」の可否など、経済環境や住む場所で格差が生じる懸念が早くから指摘されていた。

 民間試験を利用予定だった国立大の多くが、中学卒業レベルやそれ以下の成績でも出願を認める方針であることが判明。試験が形骸化する可能性も顕在化した。

 今回の大学入試改革は、第2次安倍政権下の2013年10月に教育再生実行会議がまとめた提言が土台にある。その基本的な考え方は、従来のセンター試験に代わり、高校で学ぶ事柄の達成度と大学レベルの素養の2段階に分けてテストを行うというものだ。

 このうち大学レベルの素養を見るのが大学入学共通テスト。一方、高校での学習度を測る「高校生のための学びの基礎診断」は、大学入試での本格活用に向け本年度から、国語と数学、英語の3教科を対象に試行される。判定は、大学入学共通テストの英語検定試験と同様、民間業者に委託する方式だ。

 民間の多様なノウハウを生かす発想は否定しないが、仮に民間任せとなれば改革の名に値するまい。今回の混乱を見るにつけ、文科省はどこまで制度を吟味したのか、疑いの目を向けざるを得ない。同省は改めて、一連の改革の全体像を国民的議論の俎上(そじょう)に載せるべきではないか。