市場調べ商社と交渉

 青森県平川市の柏木農高(髙野浩輝校長、生徒380人)食品科学科の生徒たちは2018年、自作のジャムを自分たちで交渉して台湾に輸出する取り組みを始めた。現地の市場視察をはじめ、作物の栽培、加工、瓶詰め、ラベル貼り、検品などを生徒主体で行い、若い高校生ならではの行動力でジャムを現地の商社に積極的に売り込んだ。

 同校は16年1月以来、青森リンゴ最大の輸出先である台湾で、青果物の流通や販売動向を学ぶ海外研修を毎年行っている。市場視察のほか、日本食品などを取り扱う総合商社「寶吉祥(ほうきちしょう)」(台北市)を見学。日本全国の特産品が並ぶ同社直営の販売店で価格や味の好みなどを調べてきた。

 17年1月、2度目の台湾訪問の際、寶吉祥に贈った自作のりんごジュースを同社会長が「高校生が作ったジュースは初めて見た。面白い取り組みだ」と絶賛、ジュースの輸出が決まった。寶吉祥のバイヤーの助言を受け担当教諭が手続きをし、この年の7月に初めての輸出が実現した。

寶吉祥の販売店で、店員から台湾の人が好む味などを聞き取る柏木農高の生徒たち=1月11日、台湾・台北市(同校提供)

 18年3月、台湾を訪問した1年生5人が、自分たちのジュースが評判になっていることを聞いた。「ジュースが売れるのなら、他の加工品も売れるはず」。チャンスと考えた生徒たちは急きょ、学校PR用に持参していた自作のジャムを寶吉祥のバイヤーに熱くセールスした。現在は3年生の丹代(たんだい)恵弥さんは「初めて行った海外で突然商品を売り込むことになって、とても緊張した」と当時を振り返る。

 生徒の熱意が寶吉祥の会長に伝わり同年6月、マーマレード、リンゴ、アップルカシスの3種類、計60個(1個200グラム)のジャムの輸出が実現。国内では1個約350円の商品が現地では3~4倍の値段で店頭に並んだ。

 小玉吉樹教諭(40)は「その場でジャムを売り込もうとしたのは、高校生ならではの勢い。寶吉祥も応援したいと言ってくれた」と話す。

 ジャムの製造は、高校の敷地内などで採れた果物を細かくして大きな鍋で加熱。砂糖やクエン酸を加えながら味を調整した後、瓶にジャムを詰めてラベルを貼り、検品などを行う。3年生の新橋利章さんは「完成までに種を取り除いたり、瓶が欠けていないか確認したり、大変なことが多い」と語る。

 これまで10回以上の輸出を重ね、ジャムの販売量は550個以上になった。取り組みは優良事例として農業白書(食料・農業・農村の動向)で紹介された。

 海外研修や商品の売り込みを経験し「物おじしなくなった。今では大舞台でも自信を持って発言できる」と丹代さん。3年生の斉藤隼成(はやせ)さんは「海外との味覚の違いなどを学んだ。将来は海外で通用する新しいスイーツを作りたい」と意欲を燃やしている。

(東奥日報社)

 

 

支える人たち
 

売り出す意欲すごい

三浦登喜江さん

 平川市にある津軽みらい農協の「産直センターひらか」には、柏木農高の生徒たちが作ったジャムやみそなどを販売する特設コーナーがある。ジャムはマーマレード、スグリ、イチゴの3種類を並べている。

 仕入れを担当する三浦登喜江さん(63)は「ジャムは普段から一定数売れていて、家族や親戚へのお土産として一気に10個買う人もいる。お盆や正月には、帰省客向けの青森県産品コーナーにも置くぐらい目玉商品になっている」と話す。

 台湾へのジャムの輸出については「積極的に海外に売り出す意欲はすごい。海外で知られることで、日本全国でも有名になればいい。これまでの経験を生かし、輸出するジャムも自信を持って作ってほしい」とエールを送った。

 

失敗恐れず挑戦して

小野好弘さん

 同校の実習講師の小野好弘さん(65)は、2009年4月からジャムのほか、みそ、ジュースなどの製造・加工技術を生徒たちに教えてきた。

 輸出するジャムの種類は生徒たちと話し合って決めている。人気の「アップルカシス」はもともと、校内で栽培しているリンゴとカシスを使ってオリジナルのジャムを-と考えて作り出したもの。今では「イベントで販売すれば、真っ先に売り切れるほどの人気の品」になっている。

 海外で日本の食品が評価されている理由の一つは、常に一定の品質が保たれていること。果物は毎年、味が微妙に変わるため、加える砂糖の量などを変え、同じジャムの味を保つようにしているという。

 「品質を下げないため、細かいところに気を配るよう生徒たちに教えている」と小野さん。「生徒たちのアイデアから新しい製品が生まれることもある。今後も失敗を恐れず、自信を持って挑戦してほしい」と期待している。