元徴用工問題の再燃に端を発する日本政府とのあつれきを背景に、韓国が破棄を決定した日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の失効期限は23日午前0時。秒読み段階に至った。

 両国と同盟を結ぶ米国が仲介する形で、ギリギリまで協定維持に向けた折衝が続く。だが双方が「事態打開のボールは相手にある」と主張する現状で、展望は開けない。

 この間にも北朝鮮は日本海に向け、断続的に飛翔体の発射実験を断行。国連安全保障理事会決議に基づく制裁の徹底履行を訴える日本や米韓の合同軍事訓練に反発し、威嚇的な姿勢を強めている。

 協定破棄によって日米韓の足並みが乱れる事態が北朝鮮を利するのは、火を見るより明らかだろう。その結果、国民の日常の安全、安心が脅かされることに思いが至らないとしたら、一国の指導者としての資質を疑う。

 先月以降、両国政府は各レベルで頻繁に接触。今月初めの東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会議の場では、安倍晋三首相と韓国の文在寅大統領が対話した。

 約10分のやり取りを、韓国政府は「友好的かつ真摯(しんし)な雰囲気」と評価。両国関係の重要性で一致などと発表した。歴史認識に起因する対立が、経済や安全保障分野に波及する現状に対する危機感の裏返しとも言えるだろう。

 17日にはASEAN拡大国防相会議が始まり、両国担当相が顔を合わせる見通しだ。協定失効が目前に迫る来週末に名古屋市で開かれる20カ国・地域(G20)外相会合の場でも、日韓は相互に接触の機会をうかがう。協定破棄の回避へ、対話の流れが実を結ぶことを切に望む。

 GSOMIAは、機密性の高い軍事情報を日韓両国が共有する枠組み。2016年11月に締結され、1年ごとに自動延長されてきた。破棄となれば、米国を介して情報をやり取りする以前の方式に戻らざるを得ず、北朝鮮の弾道ミサイル発射など即応性が求められる場面に対応できない懸念が蒸し返される。

 北朝鮮が開発する潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)は、朝鮮半島有事には日本海に出撃するとみられ、同海域を常時監視する日本の情報は重要度を増す。米国との関係をも損なう協定破棄は、それを言い出した韓国でさえメリットがあるまい。

 日米韓の協調体制の先行きを、北朝鮮をはじめ中国やロシアなどの周辺国が重大な関心をもって見ているのは想像に難くない。事ここに至ってなお理を競うより、互いの考え方に耳を傾けるのが外交の知恵。さらに時間が必要だ。ひとまず韓国は破棄を思いとどまってもらいたい。