かねてハード面を重視し、被災者の心を置き去りにしてきた日本の復興政策。孤独死やアルコール依存などの問題が顕在化し、心のケアの重要性が広く認知されたのが阪神大震災だった。

 東日本大震災の復興支援はどうか。2020年度までの「復興・創生期間」後についての政府方針からは、依然として心の問題を軽視しているのではないかという疑念が浮かぶ。

 政府が示した21年度以降の基本方針の骨子案は、復興庁の設置期限を10年延長して31年3月末までとし、本県など地震・津波被災地は「復興・創生期間後5年間で復興事業が役割を全うすることを目指す」と事実上、期限を定めた。復興期間内に完了しないインフラ事業の継続や、心のケア、子ども支援などの延長を盛り込んでいる。

 20年度で支援を区切らなかったことは評価できるが、なぜ、あと5年で区切るのか。

 心の復興は区切れない。回復には個人差があり、生活再建に伴って回復していく人は多いが、長引く人もいる。道半ばの人にとって、5年という期限に追い立てられること自体が、回復の阻害要因になるのではないか。

 東日本でクローズアップされるようになったのが、行方不明者の家族に特有の悲しみだ。「もう帰ってこない」という諦めの気持ちとともに、「いつか帰ってくるかもしれない」という淡い希望も抱き続ける家族にとって、政府方針は「あと5年で諦めろ」と宣告するに等しい。

 政府は一律に区切るのではなく、心のケアをはじめ被災地のさまざまな課題ごとに、柔軟に対応していく姿勢を示してほしい。

 「5年」たった後の被災地はどうなっているだろうか。現状でも、高齢化と人口流出に歯止めが掛からず、要介護認定者が増加。介護などの人材確保も厳しく、明るい展望は描きにくい。災害公営住宅の入居者はお年寄りが多く、孤立のリスクも高まる。

 さらに将来を描きづらくしているのが、自然災害の続発。先月も相次ぐ台風が沿岸部を襲い、ようやく生活再建を果たした被災者が再び苦しめられている。

 確実に予想できるのは、仮に国の支援が「5年」で終わろうとも、被災地で心のケアを担う支援者たちは「最後の一人まで救う」という志を曲げないであろうことだ。

 こうした姿勢は被災者の救いとなる半面、ただでさえマンパワー不足の現状で、支援者の燃え尽き(バーンアウト)が深刻化しかねない。

 区切りをつけることが、どんな事態を招くか。国はよく考え、被災者が希望を持てる展望を示してほしい。