北上支局に着任して1カ月。初めての土地で覚えることは多いが、地域の人々に支えられ、充実した生活を送っている。

 着任する前、前任者と担当地域を巡りながら仕事を引き継いだ。覚えることの多さに「自分にできるのか」と不安が募った。

 気持ちが落ち着かないまま着任し、北上市で開かれた郷土芸能発表会を取材した。県内各地の郷土芸能を継承する高校生が、地域の誇りを胸に躍動する舞台だ。最優秀賞に輝いたのは、地元の北上翔南高鬼剣舞部。気迫あふれる圧巻の演舞で魅了した。

 後日、同部の練習を見学した。培った技術の全てを伝授する3年生と、熱心に応える下級生のまなざしに胸を打たれた。現在進行形で次代に伝統を受け継いでいく現場は緊張感に満ち、神聖だった。

 同発表会は、全国高校総合文化祭予選を兼ねる。全国大会は来夏開かれるため、3年生は出場しない。それでも、技術と思いを後輩に受け渡す。その姿に「引き継ぐ」ことの尊さと責任を痛感した。

 伝統芸能は、継承してきた人の努力と思いの結晶だ。引き継ぐ者は、それを背負う覚悟を求められる。若者たちがそうした気概を持って生きる地、北上。その土地の記者として、自らも覚悟を決め、引き継ぐべき職務と向き合いたい。

(斉藤 元)