過労死や過労自殺を防ぐ対策を国の責務とする過労死等防止対策推進法が施行されてから今月で5年となった。

 国は対策大綱を策定。実態の調査研究、国民や職場関係者への啓発、相談体制の整備などを促し、長時間労働縮減などの数値目標を掲げる。

 過労死に対する認識や職場環境改善は一定程度進んでいる。しかし、過労死そのものはそれほど減っておらず、撲滅へはほど遠い。

 国は一層の調査や、指導を行わなければならない。各職場には強い自覚を望む。働く人も労働に関する知識を深めたり関係機関に相談するなどして自分を守ってほしい。

 厚生労働省の2019年版「過労死等防止対策白書」は、労働時間、年次有給休暇(年休)取得、勤務間インターバル制度導入割合について、いずれも改善傾向にあるとしている。

 例えば年休取得率(付与日数に対する取得日数)は同法が施行された14年の47・6%から17年には51・1%に伸びた。ただ、微増にとどまり、「20年までに70%以上」の目標までは大きな開きがある。

 肝心の過労死の実態だが、過労死等の認定件数は横ばい傾向にある。

 民間雇用労働者の労災補償の状況を見ると、脳・心臓疾患の支給決定(認定)件数は近年、年間250件前後で推移し、このうち3分の1以上は死亡。精神障害は500件前後で、2割弱が自殺(未遂含む)に至っている。

 過労死の大きな要因は長時間労働だ。県内で復興工事に従事の男性が勤務中倒れて死亡したケース(16年)でも、労使協定を上回る違法な長時間労働がなされていた。

 問題職場は他にもある。違法な長時間労働が疑われる県内事業所への岩手労働局の昨年の重点監督では、約3割で違法な時間外労働が確認された。本県は全国の中で年間総労働時間が長い県でもあり、各職場の改善が望まれる。

 過労死と絡む問題にパワーハラスメントがある。過酷な労働を強いたり精神的に追い込む背景になっていることが少なくないからだ。

 企業にパワハラ防止対策が義務付けられる来年6月に向け、厚労省は先ごろ指針素案を公表した。しかし、「該当しない」例が列挙されているとして労働者側は反発。「使用者側に言い訳を許し、パワハラを助長しかねない」と指摘した。さらに議論・検討を積み重ねることが必要だ。

 過労死を招いたり、その「予備軍」がいるような職場は、働く意欲をそぎ、かけがえのない健康や命を奪う。社会にとっても損失だ。「Karoshi」が英単語になったような日本の企業風土を変えなければならない。