消費税率が8%から10%に引き上げられて、きょうで1カ月を迎えた。心配された軽減税率の複雑さを巡る混乱は目立たないものの、なお消費者の戸惑いは大きい。

 共同通信による10月下旬の世論調査では、軽減税率制度が「複雑だと思う」が8割を超えた。増税直後の調査結果とほぼ変わらない。

 食料品の税率は8%に据え置かれたが、持ち帰るか、店内で食べるかで違う。同じような商品で税率が異なる例もあり、消費者の分かりにくさは残ったままだ。

 それ以上に浸透が進まないのは、一連の増税対策だろう。税率を8%に上げた5年前に消費が冷え込んだため、政府は今回、さまざまな対策を打ち出している。

 その一つが、所得の低い人と子育て世帯に対するプレミアム付き商品券だ。増税負担を軽くする狙いだが、低所得者の申請は共同調査で3割にとどまる。盛岡市も同様の傾向となっている。

 2万円出せば、2万5千円分の商品券を買える。お得感を国が強調するのに対し、事前に購入申請しなければならないなど面倒な手続きが当初から懸念されていた。

 低所得者に2万円の出費は大きい上、使用期限もある。暮らしに困った人のことを十分に考えた事業とは言えないのではないか。

 商品券事業には1800億円の国費が投じられるが、3分の1は印刷代など事務費に消えていく。巨費の割に、消費を伸ばす効果が十分でない恐れが出てきた。

 キャッシュレス決済のポイント還元にも言える。各種調査ではカードやスマホ払いを始めた人が増え、一定の効果は認められるが、高齢者の利用率はかなり低い。

 予想されたこととはいえ、年金暮らしの高齢者には不親切と言わざるを得ない。生活を切り詰めている人に恩恵が及ばない事業を「増税対策」と呼べるだろうか。

 ポイント還元事業は、初めから政策の狙いがぼやけていた。キャッシュレスの推進か、消費の下支えか、中小小売店の支援なのか、いまだにはっきりしない。

 スーパー業界などは、この事業により価格競争が激しさを増し、デフレを招くと憂慮してきた。増税後も物価が上がっていない現状は、心配が的中した形だ。

 増税に合わせて、とにかく対策を集中させる。丁寧な制度設計を欠いたまま、見切り発車する。そうした政府の姿勢が、ゆがんだ「対策」に表れたとも言える。

 一連の対策は軽減税率と併せ、小売店の負担や市町村の事務量を増やしている。その意味でも、巨費に見合う効果があるか疑問は尽きない。