飲食店で、スマホを眺めながら食べ物を口に運ぶ人がそこかしこにいる。今や見慣れた光景だ。マナーとしては決して褒められた所作ではあるまいが、それで周囲が迷惑するわけでもない

▼「ながら族」という言葉が流行したのは昭和30年代の中頃。ラジオ放送や音楽を聴きながらでないと、勉強や仕事がはかどらない。こうした状態に「ながら神経症」という診断名が付いたことから世に広まった

▼今では「ながら族」でない人を見つける方が難しいかもしれない。五感を刺激する情報が満ちあふれる現代社会。流行も興味も刻々と入れ変わり、一つのことに集中する心の余裕を保ちにくい面もあるだろうか

▼もっとも当時から、異論や反論も数々あったらしい。スマホがないと食事がのどを通らないとでもいうならともかく、スポーツや勉強、仕事の部類でも、音楽を聴くことで集中力が高まる場合があるのは実感だ

▼スマホに夢中で箸が進まないのがわが子なら注意もしようが、概して「ながら族」には寛大な世の中だ。逆に言えば、だからこそ、それが他者を危険にさらす行為であれば、余計に厳しく律しなければなるまい

▼12月施行の改正道交法で「ながら運転」が厳罰化される。一方で自動運転は、急場ですぐ人に代われるなら容認の方向だ。この寛大さには、なかなか想像が及ばない。