味と安全にこだわり

 宮城県美里町の南郷高(佐藤善則校長)で、産業技術科の生徒たちが「誰でもおいしく、笑顔で幸せになれる」をコンセプトに、ソーセージ作りに取り組んでいる。パプリカ、カブの葉など学校で育てた野菜を練り込み、添加物やうま味調味料を使わない「安心安全」が何よりの特長だ。

 同校は普通科と産業技術科からなる県立高で、119人の生徒が学ぶ。

 ソーセージ作りは、2017年度に産業技術科の3年生が「体にいい食品づくり」の授業で取り組んだのがきっかけだ。授業では満足いくものができず、有志3人が放課後に集まって試作を続けた。地域貢献活動で小学生との交流もあったため「おいしくて安全なものを子どもたちに食べてもらう」ことを目指した。

 取り組みは18年度の3年生に受け継がれ、町内の食品加工会社から具材を練り込む際の温度、塩を入れるタイミングの指導を受けるなど、試行錯誤を重ねた。10月の文化祭で来場者にも食べてもらい、年度末には「無塩せき野菜ソーセージ『あんしんソーセージ』」として商品化にこぎ着けた。製造・販売は指導に当たった加工会社が担当。町内の「花野果(はなやか)市場」、富谷市の「元気くん市場仙台店」で販売され、好評だ。

「活き生き田園フェスティバル」のソーセージ作り講習会で講師を務める生徒(右)=6月8日、美里町農村環境改善センター

 本年度は3年生10人がよりおいしく、多くの人に食べてもらうための企画、普及に力を注ぐ。色味で着目したのは赤ジソだ。赤い色素「ロズマリン酸」にアレルギー症状を抑える効果があると分かり、早速、栽培するなど改良に取り組んだ。5月には地元のイベントに続けざまに出品。6月には地元最大のイベント「活(い)き生き田園フェスティバル」の実行委員会からソーセージ作り体験会の講師の依頼も舞い込み、子どもらに手ほどきした。

 並行して進めたのが、学校給食への提供だ。学校側から町に打診し、ゴーサインが出た。「地域の高校、地域の豊かさをもっと知ってもらおう」と、同じ町内の小牛田農林高が育てる豚を自分たちの野菜と一緒に具材に使う案が浮上。岩佐広一さん(17)が「農業系高校同士のつながりを生かせる」と小牛田側に持ち掛け、実現した。

 11月11~15日に約2千食を提供する予定で、生徒たちはこの間、小中学校を回り、ソーセージについて説明する。樽石実奈さん(18)は「活動を通じ、食の安心安全を深く学んだ。子どもたちにもしっかり伝えたい」と話す。将来の夢は調理師になり、自分の店で料理を提供することだ。

 「思いを強く持ち、協力すれば願いはかなう」。3年間指導してきた山田利佳教諭(42)が生徒たちを優しく見つめた。

(河北新報社)

 

支える人たち
 

起業時の心思い出す

鈴木龍一さん

 南郷高に出向いて指導してきたのが、美里町内で手作りハム・ソーセージ、牛タン加工品などを製造・販売している「みーと工房 とんたろう」の鈴木龍一社長(65)だ。生徒が講師を務めた「活(い)き生き田園フェスティバル」のソーセージ作り体験会でも、現場でサポートした。

 「決して十分でない学校の設備で作ったにしては、なかなかの出来だった」と初めて生徒たちがソーセージを持ってきた時のことを振り返る。それ以上に印象に残ったのが「安心安全」に懸ける生徒たちの思いだ。「自分が起業した時も同じ思いだった。当時の気持ちを呼び起こされた」

 添加物や発色剤を使わない作り方も伝授。「次第に目の輝きが違ってくるのが分かった。『色はどうする』『栄養も豊かに』と一生懸命に考え、成長した」と目を細める。

 「今後は自分たちが考案した商品を実際に仕入れて販売し、利益を得るまでを学べる環境があれば望ましい」と鈴木さん。「この経験は社会人になった時にきっと役に立つ。地元に残ってくれればなおうれしいね」と笑った。

 

地域の人たちに勇気

小林誠樹さん

 地元の美里町役場は、学校で育てた野菜の販売に行く、いわば「お得意さま」。2017年には、産業振興課の職員が町の商品開発セミナーに生徒たちを誘った。農産物の付加価値を高めようと大人向けに開いたセミナーだが「生徒たちにも役立つのではないか」と考えたからだという。

 小林誠樹課長(48)は南郷高の卒業生。ソーセージ完成後はマーケティングを兼ね、仙台市で2月に開かれた物産展に生徒たちを参加させた。用意したソーセージは瞬く間に完売。「消費者とじかに接し、アンケートを集めたのは勉強になったはず」と話す。

 「地元の人と協力して一つの物を作り上げるのは大人でも難しい。地域に勇気のようなものを与えてくれた」と後輩の頑張りを評価する。今後も町としてできる支援をしていく考えだ。