萩生田光一文部科学相は、自らの発言の「重さ」を分かっていないのではないか。

 経済環境や居住地などによる受験機会の不公平が指摘される大学入学共通テストの英語民間検定試験について、同氏の「身の丈で頑張って」という発言は、公平性が担保されていないことを暗に認めるに等しい。

 同氏は発言を謝罪し、撤回もしたが、各方面からやまない疑念、懸念の数々に向き合った説明は、ついぞ聞かれない。「身の丈」発言は、撤回で不問にできる類いのものではなく、文科相の認識として問題なのだ。

 11月1日には、民間試験の成績を管理するための「共通ID」の発行申請が始まる。この期に及んで、試験の有効性に疑義が相次ぐ現状は、もはや異常というしかない。

 「試験そのものは公平に設計した」というなら、言葉を尽くして具体論で受験生らの不安を解消してほしい。

 英語民間検定試験は、大学入試センター試験に代わって現在の高校2年生を対象に2020年度入試からスタートする大学入学共通テストで、新たに導入される。

 入試センターが認定した6団体が実施する7種類の試験を活用。高校3年の4~12月の間に受験したうち、共通IDを記入した最大2回分の結果が、同センターを通して出願大学に送られる。

 だが試験会場は都市部が中心。地方在住者は、場合によって多額の交通費や宿泊費が必要になるほか受験料も試験によって幅があり、試験選択の段階から差が生じる懸念が指摘される。

 そもそも目的も尺度も異なる複数の民間試験を、単一の基準で比較できるのかという疑問も拭えない。

 試験結果は「CEFR(セファール)」という英語力の国際指標に当てはめて6段階で評価するというが、それを成績とどう対応させるかは各実施団体それぞれの手法に委ねられ、相互に公正さを担保する仕組みは不透明だ。

 7月には全国高等学校長協会が、こうした問題点を列挙する要望書を文科省に提出。当の受験生からも直接、間接に不安の声が発せられているが、一向に解消されないままに口を突いたのが「身の丈」発言の罪深さと言えよう。

 萩生田氏は「『あいつ予備校に通ってずるい』というのと同じだと思う」との見方も示している。受験生が公平に試験に臨める環境整備と、予備校に通えるかどうかは別問題。安直な発想には、文科相としての「身の丈」を疑う。

 これは、ただの政策ではない。若者の志を、国として大事と考えるかどうかという問題だ。政府は、挙げてしっかり対応してもらいたい。