「職員が減って仕事が増え、心身とも疲労困憊(こんぱい)。自分も家族も守れないと怖くなった」。遠野市の県立遠野病院(郷右近祐司院長)を退職した看護師から、本紙特命記者取材班に悲痛な声が届いた。取材を進めると、昨年4月からの1年半で少なくとも15人の看護師が辞めたことが判明。複数の退職者が「働き方改革による労働環境の悪化」を離職理由に挙げた。働き方を改善しながらいかに医療の質を保つか-。現場の葛藤が浮き彫りとなった。

 同病院は、市内唯一の総合病院。関係者によると、看護師数は近年120人程度で推移してきたが、昨年度中に定年退職を除く10人余り(臨時職含む)、今年9月末までにさらに数人が辞めた。近年にないペースという。

 背景には、同病院が昨年度から進める働き方改革がある。その目玉の一つが「外来と病棟看護の一元化」。担当がある程度固定されていた従来の働き方に比べ、看護師がローテーションでさまざまな持ち場を担うため、情報共有や柔軟なシフトを組みやすくなるメリットがある。

 一方、経験の薄い業務を広く担当することになり、心身への負担は大きい。退職した別の看護師は「看護師といえど、得手不得手な分野がある。訓練もなく未経験な分野を担当したときは、生きた心地がしなかった」と明かす。

 また、病院側が超過勤務手当の削減を進める一方、複数の退職者からは「月に60時間のただ働きを強いられた」など、過重労働の実態も聞こえてきた。

 郷右近院長は岩手日報社の取材に対し、人材の流動性が大きい医療現場の現状を指摘しつつ、「広い分野をカバーできるゼネラリストの看護師を育てなければならない。外来診察と入院を繰り返す患者も多く、流動性ある配置は、長期的に患者に寄り添うことにもなる」と説明する。