「毒もみ」とは毒を使って川の魚を取る。サンショウの皮と木炭を原料にした物を袋に入れ、水の中へ手でもみ出すと魚が浮かんでくる。その犯人を捕らえるのが警察の大きな仕事だった

▼取り締まるべき毒もみに、警察署長自ら手を染めているのでは。怪しいと子どもたちが騒ぎ、署長も罪を認める。宮沢賢治の「毒もみのすきな署長さん」は、最もしてはいけない人が、それをするおかしさがある

▼最もしてはいけない人が、それをするのが今の世の中だろうか。例えば、先生の先生に対するいじめがある。いじめはいけないと子どもたちに教え諭す。そういう人が、目を覆わんばかりのいじめをするのだから

▼法を作る国会議員が、法に触れた疑いを持たれるのも嘆かわしい。選挙区で金品を秘書が配るのは、毒もみで票を釣るがごとし。経済産業相を辞めた菅原一秀氏の議員辞職を求める声は、世論調査で半数近い

▼毒もみで捕まった署長さんは死刑になる時、笑って言う。面白くてやめられないから「いよいよこんどは、地獄で毒もみをやるかな」。それを聞いて、皆は感服する

▼菅原氏の秘書が香典を渡したのは、カニやメロンを配った過去の疑惑が取りざたされるさなかだった。やはり、やめられぬものらしい。素直に非を認めた署長のような潔さを見せれば、少しは感服するのだが。