教科書は新聞。普通科進学校の愛媛県立伊予高(芳之内亮校長、生徒818人)は今春、新聞を主教材とする独自の学校設定教科・科目を新設した。授業開始から半年、生徒は毎時間、記事を読み、話し合い、社会に視野を広げ、学びを深めている。

 教科名は「総合」、科目名は「時事問題」。3年生の選択科目(2単位)で、授業は年間約70時間。テストや日頃の取り組みで評価する。

 

学校独自で新設

 教科と科目の目標は「横断的・総合的学習を通し自己の在り方、生き方を考え、課題を発見し解決する資質・能力」「新聞記事を題材として現代的諸課題を深く理解し、問題を解決する資質・能力」の育成だ。

 総合・時事問題は、同校が教育課程の改定に伴い独自に設けた。文系、理系コースを廃止し、より選択の幅の広い「総合科目選択制」とした。

 教務主任の野本淳哉教諭は「生徒一人一人が興味関心、進路に応じて科目を選べるようにした。自身で選択することで授業に活気が出た」と手応え。総合・時事問題については「新聞を通じ、各教科で学んだ知識を組み合わせる知恵を身に付けてほしい」と期待する。

 時事問題の担当は国語科の教員3人。新聞のスクラップが自作の教科書だ。年間指導計画に合わせ旬の出来事を取り上げ、選挙や高齢社会問題といった多数の記事を活用してきた。

広がる視野実感

 3年生306人のうち88人が履修し、3クラスで各教科の既習事項を結びつけ新聞を読み、要約や討論、考察を繰り返す。賈(か)雨晨(うしん)さんは「新聞による学びは語彙(ごい)力がつくほか、日本全国や世界の出来事、時事問題の背景や今後の展開など視野を広げる」と実感する。

 授業開始半年、3学年主任の松本直美教諭は思考力の向上を強調。「暗記では辞書的な意味しか覚えられないが、新聞はニュアンスをつかめる。例えばIT弱者。電子マネーなど背景を知り課題が鮮明になる。知識をつなげ柔軟に考える力は確実についている」と効果を語る。

 

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記事から考えプレゼン

 「昨日、テレビでどんなニュースを見た」。松本直美教諭の問いに6班に分かれた伊予高3年生26人は「天皇陛下の即位礼正殿(せいでん)の儀」と即答。松本教諭は、1面トップで扱う新聞3紙を示しニュースの大きさを説明した。

 23日に行われた時事問題の授業。「新聞からプレゼンをつくろう」がテーマの課題研究計6時間の2、3時間目だ。各班10本の記事から一つを選び、賛否を話し合ってきたテーマについて再度、意見交換した。補足する記事も加え、持続可能な開発目標(SDGs)の表と照合。プレゼンの内容を絞り込んだ。

 生徒が選んだ記事は「男性議員の育休」「コンビニの元日休業」「大学生の就業体験の課題」など。発表内容をすり合わせた後、記事と付箋をタブレットで撮影し代表が発表。生徒の一人が自作のスライドを例に構成を説明し、別の生徒が課題研究に関連し読んだ本を紹介した。

 次回の2時間でスライドを作り、最終回は地元の私立大で発表する。松本教諭は「新聞で課題を見つけただけでは学びは深まらない。本を読むことで考えが広がる」と助言。裏付けをしっかり整えた上で意見をまとめるように指導した。

 活発に意見を交わす生徒ら。田中麻結さんは「新聞で予備知識がつき、テレビのニュースが楽しくなった。友人との会話で新聞のニュースが話題になる」とし、兵藤優茉さんは「班編成がテーマごとに変わり、いろいろな見方・考え方を学ぶ。会話力もついた。家でもニュースについて話したり、親が記事を探してくれたり、新聞に接する機会が増えた」と変化を語る。


教科の知識を生かす/進学後の学びも視野

 新聞を活用する伊予高の学校設定科目「総合・時事問題」。新設に携わった野本淳哉教諭と授業を担当する松本直美教諭に狙いや効果を聞いた。

(NIE・読者部 礒崎真澄)

 -新聞をテキストにした「総合・時事問題」新設のきっかけは。

 野本「昨年、NIEの実践指定校になり、授業でやろうということになった。受験には口頭試問やディスカッション、小論文がある。教科横断的に習った知識を生かすため新聞を使った授業は有効だ」

 松本「本校の生徒の大半は地元に残る。地方の中心となる人物になるために、基礎教養、情報収集・選択・活用する力、理解し伝える力を育てたい。学びのスタイルにもつながる」

 -学年の3分の1の生徒が受けている。授業開始から半年、効果は見られるか。

 松本「当初160人が希望。進路に関係する88人に絞った。文章力がつきスピーチが上手になった。要約や感想の回し読みにより文章の良しあしを知り、自分の文章、発表につなげている。記事の1文が短いことにも気付き、簡潔な文を目指しているようだ。社会への関心も高めている」

 -記事の選択や授業づくりの苦労や工夫は。

 松本「国語の教材研究にもなり苦労はない。記事選びは『どんな学びにつながるか』がポイント。各教科の教員に相談し学習に関連する記事を選ぶ。例えば、政経の労働の単元に合わせ、終身雇用や就職活動などを取り上げた。入試対策にとどまらず進学・就職後も視野に入れる。課題研究や年間テーマの設定で自分の意見を持たせたい。『進学後、こんなフィールドワークをしたい』『話題の豊富な看護士になる』と将来の学びや進学への意欲につながる」

 -今後の展開は。

 野本「軌道に乗っており、来年度は2学年への拡大を考えている。2単位として図書館の積極利用を図る科目にしたい。情報リテラシーなど新聞を活用する場面は多くなるだろう」