横浜市や大阪市はほとんど私有林がない。林業もほぼ行われていない。だが森林整備のため国からもらうお金は、森が8割を占める岩手の市町村よりずっと多い。

 国民から1人千円を集め、森林を整備、保全する「森林環境譲与税」約100億円が初めて配分された。国が自治体に配る額を巡り、矛盾が浮かび上がっている。

 市町村分のうち、最も多いのは横浜市の7100万円だった。5500万円の大阪市など10位までに七つの政令指定都市が並ぶ。

 一方、岩手は県内33市町村の単純平均が740万円余りと1桁違う。人口の少ない市町村はおおむね配分も小さく、全国的にはわずか1万円程度の所も目立つ。

 森林も林業もない大都市に手厚く、森の荒廃に悩む過疎地の恩恵は少ない。こうした矛盾が起きるのは、制度の仕組みにある。

 税を配る基準は、5割が私有人工林の面積、2割は林業就業者数で決まるが、残り3割は人口で割り振られる。私有人工林や林業をする人がゼロに近くても、人口の多い大都市が有利だ。

 荒れた森林を整える。林業を活性化し、人材を育てる。森林環境譲与税は、その財源になるはずだった。大都市有利は、ふに落ちない。

 もっとも譲与税には、木材の利用を促したり、普及させる目的もある。国は「森林の少ない都市に木材をたくさん使ってもらう事業も必要」だとしている。

 説明には一理あるが、大都市からは使い道に困る声が伝えられる。大阪市は国産材の利用に向けて学校のいすや保育園の遊具を木製にするが、限界があるという。

 東京の千代田区や新宿区は、関係の深い地方の市や村の森林整備を支援する。都市と農山村の交流という意義は認めても、制度の趣旨からすれば遠回りの感は否めない。

 地方の間にも配分の「格差」はある。私有人工林の多い自治体には手厚いが、広い森林があっても人工林率が低いと極めて少ない。1万円で何か事業をやれ、というのは笑い話ではないか。

 国は当面、地方に配るお金を借金で賄い、1人千円の税金を集めるのは2024年度からになる。千円は個人住民税に上乗せされ、納税者は6千万人に達する。

 今の仕組みで、幅広い納税者の理解が得られるだろうか。林業振興の原点に立ち返り、税の徴収が始まるまでに是正を求めたい。

 地方創生が進まないのは、税収が大都市に偏ることも大きい。お金が地方に回ることが大事だ。18年度に消費税の配分を地方に厚く改革した例もあり、見直しを期待する。