台風19号による被災で、山田町では堤防が浸水被害を拡大させた可能性が指摘されている。東日本大震災後に整備したが、背後の山や地域内に降った雨をせき止めたとの見方だ。町の検証結果を待ちたい

▼一方、その台風では国内の堤防が相次いで決壊した。7県の約70河川約140カ所に及ぶ。これまで堤防に守られてきた住民にとっては「まさか」との思いが強いだろう。ハード頼みの防災の限界を示している

▼「天災は忘れたころにやって来る」の名言を残した寺田寅彦には、堤防に関する言及がある。「万一にも大都市の水道貯水池の堤防でも決壊すれば(中略)氾濫する大量の流水の勢力は少なくも数村を微塵(みじん)になぎ倒し-」

▼「文明が進めば進むほど天然の暴威による災害がその劇烈の度を増す」という警告の中で記した。堤防周辺では避難などの対策向上を図る必要があろう

▼「劇烈の度」という点では、原発災害が最たるものではないか。大震災からの復興政策の評価・検証を巡り、政府の復興推進委員会は原発事故被災地の再生について「今後も国が前面に立つことが求められる」とした。息の長い取り組みになる

▼今日は国内初の発電成功などを記念した「原子力の日」。だが、「文明の利器」は安全神話の下で輝きを失った。寺田の警告と向き合っていたらどうだったろうか。