「ワンチーム」の挑戦は終わったが、その戦いぶりは日本のみならず海外ファンの間でも、鮮烈な記憶として語り継がれるに違いない。

 ラグビーのワールドカップ(W杯)準々決勝で、日本代表は南アフリカに敗れた。4強こそ逃したが、ラグビー界の格付けで強豪10カ国・地域の一段下に置かれる「ティア2」所属チームが、1次リーグで「ティア1」組を次々と撃破。4戦全勝で世界の8強に名を連ねたのは、紛れもない歴史的快挙と言える。

 その強さはさまざまに論じられようが、突き詰めれば南ア戦を終えて組んだ円陣で、リーチ・マイケル主将が選手らに呼び掛けた「みんなを家族のように思ってきた」との言葉に集約されるだろう。

 試合後もやまない「日本コール」の中、多くの選手がわが子をグラウンドに誘い、抱きながら、あるいは肩車や手をつないで歩いた。このシーンに、ラグビーという競技の在り方を垣間見たファンも多いのではないか。

 代表31選手中、15人が外国出身。国籍の違いに寛大なラグビーの規定に基づき多国籍化が進む各国・地域代表チームにあって、その代表格に日本の名が挙がるのは実績が伴ってこそだろう。もとより、ここまでの道のりは順風満帆だったわけではない。

 日本代表は1987年の第1回W杯から外国出身選手を起用しているが、2011年まで7大会の戦績は1勝2分け21敗。外国人頼りの編成が批判されもした。

 結果の重要性を痛感する一方で、選手の多くが市民との交流や講演などを通じて競技の普及にも積極的に取り組んだ。15年大会では南アを破るなど歴史的な3勝をマーク。出身地や国籍など、多様なバックグラウンドを持つ選手らは、コート内外にまたがる活動で一体感を高めた。

 リーチ主将は「歴史をつくれたのはファンのおかげ」と感謝した。快進撃はチームを理解し、温かく見守ったファンのサポートがあってこそという思いにほかならない。

 その精神は各国代表にも伝わり、釜石はじめ各試合会場やキャンプ地で選手と市民が交流を深め、その都度、各国メディアが「日本愛」などと好意的に報じているのは、日本開催のもう一つの成果だろう。訪日中の次期開催国フランス協会幹部は「まねできるアイデアはないかと見渡している」と話しているという。

 折しも天皇陛下の「即位礼正殿の儀」に合わせ、170を超える国の要人が来日。環境や食料、エネルギー、多発する自然災害など国境を超えて深刻化する問題は数多い。同じ地球に住む者同士、「ワンチーム」の精神が生かせないものかと夢想する。