タイの首都バンコクを大洪水が襲ったのは、岩手の大津波と同じ2011年だった。チャオプラヤ川があふれ、多くの犠牲が出た。濁水が海のように街を覆う映像を記憶する方もおられよう

▼進出した日本企業の工場も、多くは水に沈んだ。供給網が途絶え、日本の生産も止まり、影響は世界へと広がった。「水災害は、世界が協力して取り組まなければならない重要な国際問題の一つとなったのです」

▼翌年、皇太子だった天皇陛下は大学での講義でそう語られている。一つの地域で起きた水災害の打撃は、世界へ及ぶ。だからこそ、数々の災害から「たくましく立ち上がってきた日本の経験は極めて貴重」だ-と

▼水災害の傷が痛々しい中、きょう天皇陛下が即位を宣言される。台風19号の被害を受けて、予定したパレードは延期された。水の研究をライフワークとし、水の怖さも知る陛下の思いがあったのかもしれない

▼「大事なことは、自分の頭で考えること」。水災害を捉えるポイントを、陛下は学生に説く。多くの情報を集め、自分で整理し、自分なりの見方を持ってほしい、と

▼震災後、陛下は皇后さまとヘリで岩手の被災地に入られた。自分の目で大船渡や陸前高田の惨状を見て、足で水の破壊力を確かめた。水と災害に改めて理解を深め、長く被災地に心を寄せられることだろう。