レールが宙づりになった山田町船越の三陸鉄道。路盤は大雨で流失していた。今年3月、全線開通の喜びからの暗転。台風19号の猛威をまざまざと実感させる光景だ。

 台風は、復興途上の東日本大震災被災地に深刻な打撃となった。再建した真新しい住宅や商業施設の泥かきに追われる住民らの心労は深い。

 さらなる大雨が二次災害のリスクを高め、復旧への歩みを押しとどめる。冷え込みも徐々に厳しさを増しており、避難生活を強いられる住民の体調悪化が懸念される。

 災害後の心理は、おおむね4段階で説明される。発生直後の「ぼうぜん自失期」、精神的に高揚し連帯感が高まる時期、将来不安や疲労の蓄積が心身の不調として現れる「幻滅期」を経て、少しずつ生活再建に向けて歩み出す「統合期」へと向かう。

 震災から8年を経て、ようやく「統合期」へ歩んでいた被災者が、台風被害で「幻滅期」に逆戻りするのではないか。被災者の心身のケアに際しては、これまでに積もり積もったストレスにも配慮し、丁寧な関わりが求められる。

 被災者の医療や介護費用については、加藤勝信厚生労働相が18日、自己負担を全額免除すると発表した。自宅が全半壊や床上浸水したり、家計の支え手が死亡した人らが対象で、窓口で口頭申告すれば全額免除を受けられる。

 さらに、台風19号の「特定非常災害」指定により、被災でさまざまな行政手続きができなくなった人を特例措置で救済する。

 こうした各種支援情報を、漏れなく被災者に届けることも課題だ。震災時、被災した自宅を修理して住み続けた住民は、避難所に入った住民に比べ、情報も物資も得にくかった。教訓を踏まえ、訪問型支援に力を入れてほしい。

 台風被害は広域に及ぶだけに、外部からの応援も分散せざるを得まい。被災自治体がそれぞれ自前で、長期的な心身のケア体制をつくっていく必要があるだろう。マンパワーが限られる中、関係機関の「顔の見える連携」が鍵を握る。

 特に震災被災地では、現地の保健師らの負担は大きいはずだ。累積ストレスを抱える被災者の悩み、悲しみを解きほぐしていくのは容易ではない。その上、支援者自身も疲労が累積している。燃え尽き(バーンアウト)が心配だ。

 支援者が自分の健康を顧みず被災者のために尽くし、倒れるような事態になっては、元も子もない。十分な睡眠や休息、同僚らと定期的に振り返りの時間を持つなど、セルフケアが大切だ。

 復旧復興には長い時間がかかるだろう。自らを守りつつ、被災者を支えてほしい。