愛知県で開催中の国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」で、従軍慰安婦を象徴する少女像などの展示に抗議や脅迫が相次ぎ、中止になっていた企画展「表現の不自由展・その後」。14日の会期末が迫る中、芸術祭の実行委と不自由展の実行委が、展示再開で合意した。

 「表現の自由」が守られる方向になったことに、安堵(あんど)の声を上げる美術関係者ら。ただ、芸術祭が引き起こした混乱に歯止めが掛からない現状からは、今後の表現活動に危機感が募るばかりだ。

 芸術祭の芸術監督を務めるジャーナリスト津田大介氏は、美術雑誌のインタビューで、自らを「門外漢」とし、2年間の準備期間について次のように述べていた。

 「美術業界は非常に閉じられた世界だと思います」「現代のアートをきちんと世の中に接続していくのが、自分の役割かと思ってやっています」(「ギャラリー」412号、8月1日発行)

 津田氏は、芸術祭を通じ、美術を社会に開かれたものにしたいという意気込みがあったのだろう。だが、社会に対する理解度も、接続の方法にも、疑問を禁じ得ない。

 アートの公共性をめぐっては昨年、福島市に設置された防護服姿の子どもの像「サン・チャイルド」で問題になった。ネットを中心に「原発事故の風評被害を増幅する」と批判を受け、撤去。反省点として作品の丁寧な説明、合意形成の必要性が指摘された。だが、同じくメッセージ性の強い作品を扱った芸術祭で、教訓は生かされなかった。

 インタビューで津田氏は、芸術監督を引き受けた理由として、東日本大震災後に福島県いわき市で、アーティストを交えた復興支援に携わった経験を挙げている。

 本県でも震災後、各地で官民による芸術イベントが開かれ、被災者の心を励ましてきた。文化的復興や交流人口の拡大、経済効果の面からも期待は大きい。

 今回の騒動が、こうした取り組みに悪影響を及ぼさないか心配だ。特に、文化庁が芸術祭への補助金交付を決めていたにもかかわらず、全額不交付にしたことは大きな波紋を広げている。

 「芸術祭の円滑な運営を脅かす事態を予想しながら、文化庁に申告しなかった」との理由で、展示内容は判断に影響していないと説明。だが、「日本人の心を踏みにじる」など政治的発言が相次ぐ中での不交付決定には、不透明感が拭えない。

 展示内容次第で補助金の有無が決まるのではないかという懸念は、関係者の間に根強い。文化庁は、まずは不交付決定に至った経緯を詳細に明らかにすべきだ。