筒井康隆さんには「偽文士日碌」という著作もあり、折に触れ自分のことを「偽物ですから」と言ったり書いたりしている。真贋(しんがん)の見極めは、思うほど簡単じゃないよと諭しているようだ

▼終戦から間もない頃は、偽医者が随分出回っていたという。短期訓練で医学知識を詰め込まれた衛生兵が、復員後に医者になりすまして治療費をせしめていた。医者より医者らしい腕前の偽者も多かったと聞く

▼世の中に資格や肩書は数あるが、全員が相応の技量や見識を持ち合わせているかとなると疑問がある。早い話が運転免許。れっきとした国家資格だが、あおり行為や信号無視など適性を疑う場面は身近にも多い

▼「地位は人をつくる」とは、よく耳にする人生訓。「それらしく振る舞っているだけ」という筒井流「偽文士」が示唆するのは、本物の資格や肩書を身にまとう偽者が世にはびこることへの痛烈な皮肉だろうか

▼その地位が「カネをつくる」場合もあるから「偽者」にはたまらない。原発の立地自治体の元幹部から関西電力首脳陣が受け取っていた金品は、総額3億2千万円。関電から出た資金が環流していた疑いがある

▼核のごみじゃあるまいし、「一時保管していた」という釈明が通るなら財産罪は成立しない。疑惑解明の期待を担う各部門には、その肩書相応の振る舞いを望みたい。