「まさか」の大雨に、どう行動すべきか。今年もまた、痛ましい犠牲とともに、数々の課題が残された。

 広範囲に甚大な被害をもたらした台風19号で命を落とした人は、岩手をはじめ12都県に及ぶ。避難が遅れて、自宅などで濁流にのみ込まれたケースが目立つ。

 被災地に共通するのは、急激な増水だ。大した雨ではないと自宅にいたら、あっという間に水かさが増した。もう逃げられない-との状況が各地から伝えられた。

 阿武隈川や千曲川の流域は「100年に1度」の大雨が降ったとされている。堤防が決壊するほどのまれな災害を、日頃から意識して生活するのは難しい。

 だが、昨年の西日本豪雨に続き、日本は2年連続の広域・大規模被害となった。頻発する災害の教訓を生かし切れず、多くの犠牲が出たことは残念でならない。

 西日本の悲劇を繰り返すまいと、中央防災会議の作業部会は昨年暮れ、住民に「自らの命は自ら守る」意識を新たに求めた。行政は、住民の避難行動を「全力で支援」すべきだとしている。

 地球温暖化に伴い雨の降り方が激しくなった。行政によるハード整備は限界がある。住民が平時からリスクを把握し、災害時に避難行動を取るよう促したものだ。

 「自らの命は自ら守る」。その意識が、どこまで住民に浸透していたか。検証を重ねて、必ず来る次の災害に生かさねばならない。

 住民意識とともに、「全力で支援」すべき行政の対応も検証の必要がある。今回の台風も雨脚は夜間に強まった。夜の避難の難しさは過去に再三指摘されている。

 気象庁は早い段階で警戒を促していたが、岩手に特別警報を出したのは午前0時40分だった。その前後、県内沿岸部の自治体は避難勧告を指示に切り替えている。

 県内では約1万人が避難した。深夜に行政の避難呼び掛けがどう行われ、住民が命を守る行動をどう取ったか。実態と課題を確かめたい。

 当初、気象庁が「狩野川台風に匹敵」と発表したことから、東北では「自分には遠い話」と受け止めたともいわれる。新たに始まった「警戒レベル」情報を含め、避難支援の実効を探るべきだ。

 「自ら命を守る」ことが難しい人の避難の課題も、再び浮かび上がった。今回の台風で犠牲になったのは高齢者が多数を占め、西日本豪雨の被災状況と変わらない。

 高齢者、障害者ら要支援者の名簿作成は市町村に義務付けられている。半面、一人一人の「個別計画」作成は進んでいない。名簿作成、活用の実態も改めて点検が必要だ。