台風19号で降り始めからの総雨量467ミリを記録した普代村は、中心部で土砂災害や冠水が相次いだ。自宅1階が土砂に埋まった芦生(あしおい)ユキさん(80)は13日、住民の手を借りて無事な家財道具を運び出していた。夫信一さん=当時(80)=が東日本大震災の津波で亡くなり8年7カ月。一人きりの自宅で不安な夜を明かし、「普段の景色が一変してしまった。でも、この家を離れたくない」とつぶやいた。

 13日午前0時ごろ、自宅を揺らす大きな音でたたき起こされた。裏山で土石流が発生し、流木や大量の土砂が流れ込む。「健康のため、階段を上り下りすることが大事」と、普段から2階で就寝していたことが命を救った。

 3年前の台風10号豪雨は周囲の道路が冠水した程度だったが、今回は想像を上回った。「急いで玄関を開けて、土砂がたまらないようにするだけで精いっぱいだった」と振り返る。幸い、固定電話は使えたため、近所の人に連絡して救援を待った。

 13日正午。芦生さんの自宅周辺は、大人の膝の高さまで積み重なった泥が復旧を阻んでいた。

 芦生さんは近所に暮らす妹から事前避難を促されていたが、信一さんや子どもたちとの思い出が詰まった家を離れることはしのびがたかった。基礎をかさ上げして災害に備えていた自宅だが、今後の生活再建が重くのしかかる。

 「震災の津波に続き、今度は山津波。一晩でここまでひどくなるとは思いもしなかった」