夢に描くことすら難しかった大仕事は興奮の毎日だった。目の前で花巻東高出身の菊池雄星(マリナーズ)や大谷翔平(エンゼルス)が米大リーガー相手に三振を奪い、本塁打を放つ。本県出身2人を追った現地での取材は、まさに奇跡の時間だ。

夢の時間、心は熱く

 今季は春季キャンプから計4人の記者を派遣し、菊池は計15試合、大谷は計32試合を取材した。菊池がマリナーズに加入したことで、2人は同じア・リーグ西地区に。直接対決は3試合実現し、6月の最初の対戦には本社のベテランカメラマン2人も現地入り。至高の時間のシャッターチャンスを狙った。

 8月には本年度入社した運動部の清川航矢記者を派遣。高校、大学球界で活躍した野球選手視点で情報を届け、「日本とは異なるスケールの大きさ、ファンを楽しませるボールパークの魅力を感じた」と高揚しながら取材に臨んだ。

エンゼルスタジアムの正面入り口前にはグラウンドをかたどった広場があり、野球経験者の清川航矢記者も笑顔で記念撮影=米アナハイム

 他の取材もあるため現地に常駐はできないが、2人はいつも優しい。菊池は初対面の清川記者と笑顔でがっちり握手、大谷は囲み取材で気を利かせ岩手の子どもたちへのメッセージを寄せてくれる。昨年は報道陣の前で「岩手日報さん、忘れ物があります」とたっぷりいじられた。

 「海外の生活は大変か」と多くの人に聞かれるが、全くそんなことはない。現地住民やホテルの従業員らは片言の英語でも優しく耳を傾け、ゆっくりと話してくれる。1週間たてば記者の耳も英語を聞き取れるようになり始め、まさに「習うより慣れろ」。生活で気になるとすれば浴槽が浅いことくらいだ。

 敵地への遠征も多いが、航空会社やホテル選びも楽しさの一つ。ナイターの場合は午後3時前後に球場入りするため、昼まで自由時間。日本とは違った街並みを散策しながら、肉料理だけでなく、中華料理やおいしいハンバーガー店を探す。紙面の「メジャー通信」の題材になったり、気分転換にもなる。

 何よりも2人の活躍が仕事の活力。頭は冷静に、心は熱く。2人と同じ気持ちになりながらボールパーク発の記事を書いている。

(運動部・小田野純一)