一関市の一関一高(遠藤可奈子校長)の1年生(6クラス・237人)は朝学習の時間に週1回、NIEに取り組んでいる。クラスごとに週番2人が複数紙の中から選んだ記事を使ってワークシートを作成。生徒は15分間集中して記事を読み、自分の考えを書き込む。遠藤校長は「新聞を読むと視野が広がり、発見があり、思考が深まる。社会の出来事を表面からだけ見るのでなく背景まで考えられるようになってほしい」と期待を寄せる。

多様なジャンル

 ワークシートの課題は二つ。最初に記事を読み、大事だと考える3カ所に線を引く。読めなかった漢字・意味の分からない語句にはマーカーを引き、きちんと辞書で調べることで語彙(ごい)力をアップ。次に、自分の考えを記述する。

 10月第1週に取り上げた記事は、香港デモ関連が3クラス、消費税10%が2クラス、「名誉殺人」厳罰化を求める中東デモが1クラスだった。

 香港デモの記事に向き合った1年E組は、同世代の高校生が実弾で撃たれ重体になっているという報道に、驚きや不安、落胆などさまざまな感情を抱きながらペンを走らせた。

 「日本にはこのような過激なデモがないため、私たちと同じ年代の人がデモに参加し、警察官に撃たれたということにとても驚いた」(鈴木柚那さん)

10月第1週に、1学年がクラスごとに取り組んだNIEワークシート

 「怒りにかられて過激化するのも、警官が銃という強い武器を使用するのも避けるため、正しい情報と深い思慮が必要だと思う」(菅原菜央さん)

 「デモ隊を擁護するつもりはないが、政府への反感が大きいことの表れだと思う。武力排除よりは政策の方向転換で温和に対応してほしいと思う」(大渡柊太さん)

 「政府と民間での意見の食い違いがこのような出来事を引き起こすと考えられる。だから自分たちの国をつくる政府を決める権利のある選挙の重みを実感した」(藤井紗希さん)

 冷静に情勢を分析し、平和的な解決を望む意見が多かった。日本に視点を移し、選挙の重みに言及した生徒もいた。

普段の話題にも

 週番の小原真白(ましろ)さんは「身近なことだけでなく、日本の近くの国で起きていることにも目を向け、考えなければと思った」と記事を選んだ理由を語る。

 NIEに意欲的に取り組んでいる生徒たち。「朝15分間集中して考えを深め、文章を練り上げる作業は新しい大学入試への対策にもなる」と小野寺海斗さん。

 1学年のNIE担当・佐々木俊樹教諭は「毎回、生徒がどんな記事を選んでくるか楽しみにしている。普段の会話の中でも話題になることが増えてきた」と効果を実感している。


本気で向き合いたい 梅村琴音さん(1年)

 NIEの活動をベースに新聞を普段どのように活用しているか。梅村琴音さん(1年)が自身の取り組みを紹介する。

 高校生になり、勉強に部活にと忙しくなった私は、新聞にじっくり目を通す時間が少なくなってきた。読んだとしても、内容が脳を通っていくだけで、明確に自分の考えを持つこともない。また、家でとっている新聞は一種類であるから、必然的に受け取る情報に偏りが生じてしまう。

 だから、学校でのNIEの取り組みは、私にとって貴重な時間となっている。週に一度、じっくり、しっかり記事を読む機会が保障されているのはもちろん、感想を書かなければならないため読みが深くなり、理解も深まるという取り組みだ。書くことで自分の中の考えも整理される。

 また、学校がとっているさまざまな新聞社の記事から選ぶため、幅広い意見に触れることができる。NIEの時間が終わった後に友達と意見交換をすることもあり、さらに考えを深めることができる。自分一人で、家で読んでいては受けられない、多くの良い影響があるように思う。

 生徒が順番に記事を選ぶので、普段一人では目をそらしがちな社会の問題にも真正面から向き合うことになる。未来を担う世代として何ができるか、何をすべきかを考えることになる。

 週に一度、社会について、情報との付き合い方について、そして将来について考えられるこの取り組みに、私は本気で向き合っていきたいと思う。ちなみに私が今、最も興味を持っているのは今度の臨時国会である。消費税引き上げについてどのような議論になるのか。軽減税率の報道は「面倒」「混乱」など一様に悪い面が取り上げられ、情報に偏りがあると感じるので、実際はどうなのか。さまざまな意見を聞いてみたいと思っている。


行動につなげる力育む 一関一高・佐々木俊樹教諭

 1学年NIE担当の佐々木俊樹教諭が活動の狙いや効果、生徒への願いを語る。

 朝学習の時間に国語、数学、英語の主要教科に加えて週1回、NIEを取り入れた。社会科の教員として、生徒が世の中のことに関心を持ち、自分は何ができるか、どのように行動すればよいかを考える時間をつくりたかった。

 ワークシートに使う記事を教師が選ぶか、生徒が選ぶか迷ったが、NIEのスタートにあたって、まずは生徒の視点を知りたいと思い、生徒に選んでもらうことにした。学年でテーマを統一するのではなく、クラスごとに週番が選ぶことにしたのも多様な記事が出てくると考えたからだ。

 記事を選ぶときは1面に載るようなトップ級の記事だけでなく、見落としがちな小さな記事にも目を向けてほしいと伝えた。小さな記事でも、その背景を知ると、実は大きな問題を抱えていることに気付かされる。これまで、風化が懸念されている東日本大震災の復興のことや性的少数者(LGBT)などを取り上げて考えを深めたクラスもあった。新聞で知る出来事を、遠くで起きていることだから関係ないと思ったり、「なるほど」で終わらせたりしないことが大事だ。

 また、記事を読み、感想を書く活動を継続することによって、今の自分にどんな力が必要か客観視できるようになる。NIEは教科ではないのでテストはしないが、どの教科にも関わること。読解力や情報収集力、分析力、そしてそれらを基に行動につなげる力は進学後も、社会に出てからも、必ず求められる。

 本校は本年度から文部科学省のスーパーサイエンスハイスクール(SSH)に指定された。自然科学や災害、文化など幅広い分野で探求活動に取り組むときにもNIEで培った力が役立つと思う。

 世の中のことに関心を持ち、視野を広げ、社会のために何ができるかを考え行動する大人になってほしい。

(談)