収量増加へ実験重ね

 山形県村山市の村山産業高(大山慎一校長、生徒482人)農業部は、植物の内部で共生する微生物「エンドファイト」について研究している。微生物を培養した特定の菌液を地域特産のソバに与えると、収量が約3割増えることを発見。化学肥料の代わりにこの菌液を使えば、山形県全体のソバに使われる肥料コストのうち約10億円が削減できると提唱した。実用化に向け研究が進む。

 昨年の研究では、ソバの根部分から約40種類のエンドファイトを抽出。それぞれの菌を純粋培養してソバに与え、比較しながら成長を促す菌種を探り当てた。実際の畑で栽培するソバにその菌液を与えたところ、菌がない状態と比べて約3割の収量増となることが分かった。

エンドファイトの入った液体をじょうろでソバにかける生徒=9月9日、村山市

 この結果を茨城県で開かれた未来の科学者を発掘する「つくばサイエンスエッジアイデアコンテスト」(今年3月)で発表した。化学肥料をこの菌液に代替することで肥料コストを大幅に削減できると提案した結果、最高賞の一つ「未来指向賞」を獲得した。さらにシンガポールで開催された国際アイデアコンテスト「グローバル・リンク・シンガポール」(7月)にも参加し、英語発表を通して世界へも発信した。

 両コンテストに出場したともに3年の佐藤陽菜(ひな)さんと笹原悠馨(ゆうか)さんは「発表はとにかく緊張した。これからも、やり方を変えながら実験すべきことがたくさんある」と、さらなる展開を見据える。顧問の広瀬僚太教諭(35)は「普段の作業は地味だが、積み重ねることでようやく評価されるようになった」と話す。

 研究のレベルは高校生の枠を超えている。日本土壌肥料学会(9月3~5日、静岡市)のポスター発表に2年鈴木千夏さんが参加し、18チーム中、最優秀に次ぐ優秀ポスター賞に輝いた。行政や民間機関の専門家、大学の研究者から質問を受け、研究に関するアドバイスももらった。

 現在、エンドファイトの実験は真っ最中だ。実験室では、ソバの品種「でわかおり」「最上早生」などをポットで育て、培養した菌液と品種ごとの相性を調べている。実験と同時進行で畑ではソバも栽培。じょうろで菌液をかけ、与える種類、量でどのように収量が変わるかを調査している。

 最終的な目標はエンドファイトの実用化だ。広瀬教諭は「求められる実験の精度、質は高くなっており、さらに上のレベルを目指している」と話す。2年の岩月叶(かなう)さんは「実験ではいろいろな条件を変えたり、効率化を図ったりしてみたい。成果が出るまでは努力は惜しまない」と力強く語った。

(山形新聞社)

支える人たち
 

多くの生産者が期待

佐藤和幸さん

 おいしいそばで有名な山形県村山市。そば店でつくる「最上川三難所そば街道振興会」の佐藤和幸会長は「エンドファイトの研究で肥料が減らせると聞き、多くの生産者は実用化を待ち望んでいる」と話す。

 佐藤会長は同市の山の内地区でそば店「手打蕎麦おんどり」を営みながら、ソバ栽培にも取り組む。ソバは10アール当たりの収量が40~50キロと低い上、天候に左右されやすく高い栽培技術が求められる。20年以上栽培しており、「ソバは短期間で成長する作物なのでたくさんの栄養が必要。連作障害が起きており、エンドファイトを使ってみたい」と期待を寄せる。

 また、県内外の高校生がそばの手打ち技術とソバを使った創作料理を競う「そば甲子園」が9月に村山市で開催され、農業部は今年初優勝した。佐藤会長は審査員の一人で「ソバを使った菓子が断トツにおいしかった」と笑顔で話した。

 

イベント満足感共有

寺崎隆さん

 山形県内陸部の大動脈・国道13号沿いにある道の駅むらやま。農業部が地域とつながる場となっており、寺崎隆駅長(49)は「さまざまなイベントに合わせて来てもらっている。一緒に頑張って、終わったときの満足感が心地よい」と生徒の活躍に目を細める。

 今年初めて開催し、大盛況だったのは7月の「日本一早い芋煮会」。農業部が超促成栽培したサトイモを使って芋煮を作り、来場した約100人が一足早い山形の秋の味覚を味わった。また、そば甲子園で披露した菓子2品は、道の駅の来訪者を対象に試食、販売して味を磨き上げた。チョコケーキにソバの実を入れた「ソバノミ・ヘレダッケャ」と、ソバの実をのせてキャラメルをかけたクッキー「ソバノミ・ノセダッケャ」は各所で好評だ。

 生徒たちの元気の良さ、素直な笑顔が好印象という寺崎駅長は「道の駅はさまざまな世代が集まる地域の拠点。高校生が関わることで、さらに地域から愛されるようになれば」と話している。