東日本大震災津波で児童74人が犠牲になった宮城県石巻市の大川小。遺族が損害賠償を求めた訴訟で、最高裁が市と県の上告を棄却した。事前防災の不備を理由に賠償を命じ、「画期的」と評された二審判決が確定した。

 震災から8年7カ月。小さな命を守るための明確な指針が、ついに示された。市と県はむろん、全国の教育関係者は司法判断を真摯(しんし)に受け止め、事前防災体制の強化に務めなければならない。

 あの日、大川小では地震発生後、児童は教員らの指示で校庭に40分以上とどまり続けた。避難を始めた直後に津波が襲来し、巻き込まれた。

 一審仙台地裁の判断の枠組みは、地震発生以後の避難対応。児童が助かった可能性が高い裏山を避難先に選ばなかった過失は認定したが、事前防災の不備は認めなかった。

 大きく踏み込んだのが二審の仙台高裁判決。学校側が危機管理マニュアルに避難場所や経路を定めず、市教委も不備を是正しなかったとして、市や校長らの震災前の組織的過失も認定した。

 遺族側は判決を「学校防災の礎」と評価。実際、釜石市の児童生徒が事前学習の成果を生かし、主体的な避難行動で助かった事例などを踏まえれば、十分な備えの必要性は明らかだ。

 そもそも大川小では地震後、児童が安全な裏山への避難を訴えたが、教職員に聞き入れられなかったという。学校側が実効性のあるマニュアルを作り、避難訓練を重ねていれば、救えた命だったとしか思えない。

 にもかかわらず市側は、高裁の事前防災の要求に応えるのは「無理」などとして上告し、県も追随した。子どもの命より組織を守ろうとしたとしか思えない判断で、遺族の苦しみを長引かせた責任も、極めて重い。

 ただ、高裁判決が示した事前防災の高いハードルに、全国の学校現場から戸惑いの声が上がったのも事実。その背景には、教員の多忙化などから、防災に手が回らない現実もあることだろう。国と自治体は「命を守ることこそ教育の使命」という認識を共有し、そのために必要なマンパワーの確保などに力を入れるべきだ。

 震災から歳月が経過するに従い、各地の遺族から記憶の風化、災害時の危機意識の低下を懸念する声が上がる。

 旧大川小校舎は震災遺構として保存が決まった。遺族が定期的にガイドも行っている。ぜひ、多くの人に現地を訪れてほしい。津波の猛威を刻む校舎、児童がとどまり続けた校庭、逃げようとした裏山。実効性ある事前防災の取り組みは、あの日を心に刻み続けることから始まる。