稲刈り終盤の県内、天候が気になるところ。収穫の無事を願いつつ、垂り穂の上を飛び交うトンボを目にする。童謡「赤とんぼ」が頭に浮かぶ。

▼作詞の三木露風は近代日本を代表する詩人として北原白秋とともに「白露時代」を築いた。今年生誕130年。童謡のもとになった詩は1921(大正10)年に発表された。その5年後に東北地方を訪れている

▼近藤健史・日本大通信教育部教授(元盛岡大助教授)がこの旅と作品について考察した論文によると、盛岡に滞在し東北高等女学校で「宗教と文学」と題して講演した

▼盛岡中学校と女子師範学校でも演壇に立ち、同中は他校の学生も合わせ2千人以上の聴衆が詰め掛けた。拍手とともに「天才の詩人!」と声が掛かるほどの人気だった

▼初めて訪れた土地だが、親しみを感じていたとされる露風。「故石川啄木君の記念碑が盛岡郊外に建ってゐる。石川君は盛岡付近の渋民村の出身であるからであった」と啄木の存在を挙げているという。盛岡では、求めに応じ短冊や色紙に詩歌を書いた

▼残念ながら、現在ではそれらの所在は不明。詩歌を紹介した当時の新聞記事も見つかっていない。近藤教授は「盛岡在住の方々のところに、ひっそり眠っている」作品の発掘に期待を寄せる。見つかれば「文学の国いわて」の新たな実りとなるだろう。