神戸市立東須磨小の教諭4人が同僚の4人をいじめた問題にはあきれるばかりだ。被害を受けた教諭は「羽交い締めにされて激辛カレーを食べさせられた」などと訴えている。児童に対しても、ひどい仕打ちをした疑いが出ている

▼こんな教師たちでは子どもの信頼を得ることはあるまい。教え子に対して真剣に向き合うこと。良き教師は誰もが実践していよう。そんな世界を描いた小説は数々あるが、その一つに三浦綾子の「銃口」がある

▼ただ、問いかける内容は重い。時代は戦争へ突入する昭和。熱心な教師たちが治安維持法違反容疑で摘発される。実際にあった北海道綴方(つづりかた)教育連盟事件が題材だ。軍国主義下の、表現への弾圧が暗たんとさせる

▼そんな閉塞(へいそく)した時代の中で苦闘する姿が胸を打つ。他の小説を含め三浦が描く世界は、生きることの苦難、それ故の人生の尊さを伝える。背景にキリスト教があるが、崇高な精神性に満ちた作品に心が洗われる

▼「愛とは何か」「いかに生きるべきか」を問い続けた作品群は、東日本大震災後、新たな脚光を浴びた。噴火被害からの復興の姿を描いた「泥流地帯」「続泥流地帯」に震災復興を重ね合わせた人もいたようだ

▼北海道を舞台にした作品の空気感は、同じ北国の岩手に通じるものがある。きょう没後20年。求める者に作品は応え続ける。