身近にある病院は、住民の安心そのものだ。過疎化が進む地域はなおさら。移動手段が限られる中で、病院が遠くなる不安は大都市圏の比ではない。本県はじめ、北国では厳しい冬も難題だ。

 厚生労働省が再編・統合の議論が必要と判断した公立・公的病院の名称公表は、全国一律の基準に当てはめて割り出したものだ。もとより強制力はないにせよ、もろもろの事情がある地方の戸惑いや反発は当然だろう。

 急病や大けがなど「高度急性期」「急性期」の患者を受け入れる1455病院を対象に、2017年度のデータを基に、がんや救急医療など9項目の診療実績と、競合病院が「車で20分以内」にあるかで分析。全体の3割近い424施設が要検討とされた。本県では10施設が該当。調査対象の約4割に当たる。

 全国的に、これほどの該当数は地方側の想定外に違いない。全国知事会など地方3団体との協議の場では「あまりに唐突で不適切」など厳しい意見が相次いだという。

 もとより病院経営を見直す必要性は、地方側も重々承知の上だろう。25年には団塊の世代が全員75歳以上の後期高齢者となり、総人口の3割を65歳以上が占める。

 急増する医療費は自治体財政を圧迫する。本県の県立病院等事業会計は18年度まで5年連続の赤字。累積欠損金は478億円に上るという。人口減が続く中で現状を維持しようとすれば、負担増になって住民に跳ね返る。

 少子高齢化に伴う人口構成の変化に合わせ、国の指導で各都道府県は25年に向け「地域医療構想」を策定。比較的若い世代の需要が多いとされる高度急性期・急性期のベッド数を見直し、術後のリハビリに対応する回復期のベッドを増やすなど、病床の数や機能の再編、在宅医療への移行などに取り組む。

 病院のベッド数は、現在の全国約125万床から約119万床に減らす方針。病院名公表は、その取り組みに発破を掛ける意図が明白だが、その必要性と地域事情のはざまで、さまざまにジレンマを抱える各自治体や首長に強要と映ったのは想像に難くない。

 そもそも日本の医療提供体制は民間中心。病院数は全体の約7割、ベッド数も6割近くを占める。改革が国や都道府県の判断が及びやすい施設に偏れば、逆に将来的な医療環境を不安定にしかねまい。

 厚労省は近く、民間病院の診療実績データも公表する方針。民間には抵抗感もあろうが、それも含め、公と民のバランスで「地域医療を実情に合った形にしていく」(加藤勝信厚労相)ための議論が深まるなら、不興を買う「ショック療法」にも意味がある。