菊池雄星投手(盛岡市出身、花巻東高)の米大リーグ入りが決まった。開幕に向けて県民の期待は高まり、熱いエールが送られている。

 移籍交渉に当たった代理人によると、12、13球団が獲得に興味を示したという。最速158キロの本格派左腕に対する評価の高さを物語る。

 その中から選んだマリナーズは、チーム再建に取り組んでいる。27歳の左腕は、中長期的な展望の中でチームづくりの一翼を託された。

 本拠地のシアトルは米国西海岸にあり、東海岸に比べると気候の面などでプレーしやすいのは好材料だろう。特別な配慮もなされるようだ。球団公式サイトによると、先発ローテーションに入れながら5、6試合ごとに1イニング程度の投球で交代させ、体に負担を掛けないプランを用意している。

 県民にとっては、高校の後輩であるエンゼルス・大谷翔平選手との対決が大きな楽しみだ。両球団は同リーグの同地区に所属するため、対戦する試合数が多い。今年は打者に専念する大谷選手に対してどんな投球をするだろうか。

 あの涙が忘れられない。2009年秋、ドラフト会議を前にプロ野球志望届を出した時だ。高校3年生の当時、日本の球界を経ずに直接米球界入りする夢を持っており、大リーグの多数のスカウトも足を運んでいた。

 しかし、甲子園のスターを日本の球界が放っておくはずがない。さまざまな意見を聞く中で大リーグ入りをひとまず封印、日本で実力を磨くことにした。しかし、それは苦渋の決断であり、それ故の涙だった。

 ここまでのプロ9年間の道のりは平たんではなかった。故障に泣き、初めて2桁勝利を挙げたのは7年目。「10年に1人の逸材」と鳴り物入りだったことを考えると歯がゆい感じもした。

 しかし、8年目は16勝で最多勝となり、最優秀防御率と併せて2冠を獲得。球界を代表する投手となり、9年目の昨年は所属する西武をリーグ優勝に導いた。ポスティングシステムでの海外移籍は、十分な貢献を西武が認めたことも大きいだろう。

 苦節を経て、大リーグのマウンドに立つ夢が実現する。

 大谷選手は「二刀流」で旋風を起こすとともに、礼儀正しく優しい人柄でもファンを魅了している。菊池投手も入団会見で英語で応答する姿勢が好感を持って迎えられた。ファンの心をがっちりつかみそうだ。

 岩手から2人の大リーガーが誕生しようとは、十数年前には想像もつかなかったことだ。彼らの雄飛は野球だけでなく、広く本県スポーツ界に勇気を与えている。