東日本大震災から8度目の新年も、仮設住宅で迎えた住民。仮設店舗で営業する事業者。被災地は今なお「仮」という言葉が付いて回る。

 今年は転機を迎えることだろう。高台の新たな街に、戸建てや災害公営住宅、真新しい店舗が立ち並んできた。学校用地の仮設は、本年度内に全て解消される見込み。建築費の高騰など課題はあるが、ハード面の復興が最終盤に差しかかったことを実感する。

 ただ、新たな出発が、必ずしも希望に満ちているわけではない。狭く不自由な仮設生活が続いたため持病が悪化していたり、ストレスを抱えている住民は多く、ローン返済などに不安も募る。

 あまりに長い「仮」が、新たな時代を拓(ひら)く力を弱めているのではないか。とりわけ「仮」しか知らない子どもたちの、健やかな成長への影響が懸念される。

 仮設後を生きる力を見いだしたい。そんな思いで被災地を巡る中、陸前高田市の竹駒小校長、千田晃一さんの短歌が、「手をつなぐ力」を思い起こさせてくれた。

 震災時、千田さんは高田小に勤務。2011年3月12日から同年12月31日までに詠んだ計28首を、自ら撮影した写真と共に手作りの冊子にした。衝撃と悲しみの率直な表現に心打たれつつ読み進む。

 「『うで棒』と名づけたうでをさかあがり その小さき指で しっかりつかみ」

 津波で校舎1階が浸水した高田小。3カ月以上使えなかった校庭が、いよいよ使えるようになった。2年生の女の子が「さかあがりしたい」。だが、鉄棒をはじめ遊具は全て流失。そこで、千田さんと同僚が、がっちり握手した。2人の腕でつくった「うで棒」を女の子がつかみ、いざ、さかあがりに挑戦-。

 これこそが力であろう。長い「仮」は単なる空白期間ではない。マイナスをプラスに転じる、人間が本来持つ力を再認識する契機でもあった。

 避難所や仮設で住民たちが手を取り合い、困難に対処してきた日々を思い出す。必要なものがなくても、より良く生きるために発揮された創意工夫。その経験を忘れず共有していくことが、時代を拓く力になるのではないか。

 仮設に残る住民と出た住民が手をつなぎ続ける。災害公営住宅で出会った住民同士が手を差し伸べ合う。そんなコミュニティーづくりを行政は積極的に後押ししてほしい。

 千田さんは竹駒小の「震災を語り継ぐ会」で、児童に「うで棒」の話を交え「夢と思いやりを大切に、陸前高田の将来をつくっていってほしい」と語り掛けている。

 「手をつなぐ力」を知る子どもたちの成長、夢の実現が楽しみだ。

(黒田大介)