芸術は、困難な状況にある人々に希望の光をともす。そんな期待をしぼませたのが、福島市が昨夏「未来への希望」として設置した防護服姿の子どもの像「サン・チャイルド」騒動だった

▼現代美術家ヤノベケンジさんが、東日本大震災を機に制作。設置後、ネットなどで「福島原発事故の風評被害を増幅する」と批判が集中。賛否が割れる中、撤去された

▼再び希望をともしてくれたのが、東京都の森美術館で開催中の「カタストロフと美術のちから」展。災害、戦争、テロなど大惨事にアートはどう向き合い、どんな役割を果たすのか。テーマもスケールも壮大だ

▼陸前高田市出身の写真家畠山直哉さんが震災後の故郷を撮影した写真など、国内外のアーティストの力作が勢ぞろい。災害の記憶の継承、犠牲者の鎮魂、文明の再生など、テーマも作風も多彩だ。圧巻は、難民問題の解決を願うオノ・ヨーコさんの作品

▼荒波で難破した難民船だろうか。ぽつんと船が置かれた一室。その空間に来場者が立ち入り、壁、床、船に平和への願いを自由に書き込んでいく参加型作品だ。「PEACE(平和)」「ススメ!!」「前へ」…

▼書き込みを心に刻み、会場を後にする。願いをたくさん積み込んだ船で、穏やかな新春の海へこぎ出す気分。やはり、芸術は必要だ。かなえられるべき願いある限り。