人がだんだん少なくなる。地域に住む人の数が今の半分に減る。にわかに想像できないが、四半世紀後に予想される岩手の姿だ。

 平成の次の時代は、本格的な人口減少社会が到来する。国立社会保障・人口問題研究所は昨年、本県の2045年人口を88万人と推計した。今より36万人少ない。

 人がいなくなるのは町村部でより激しい。県北・沿岸を中心に10市町村で半減する。中でも西和賀町は6割の減少が見込まれている。

 西和賀町中心部の大野集落。ここでは、集落がさまざまな「事業」を手掛ける。誰かが亡くなれば、祭壇組合が葬祭を行う。コンサートなどの文化事業も開く。

 1人暮らしで買い物が難しい人には、車を出してスーパーに連れていく。世帯数43戸のまとまりは強い。地域の団結で活動を盛んに行う集落は、町内で他にもある。

 昔からのコミュニティー力をさらに高め、集落自ら「事業」を展開して地域の課題を解決する。人口半減の地域で生き抜くモデルとして、他の参考になるだろう。

 一方、地域には急速な高齢化ものしかかる。団塊の世代が75歳以上になる「2025年問題」の後も、高齢化は終わらない。45年の岩手は4人に1人が75歳を超す。

 集落が存続できるか、各地で正念場を迎えた。県内でも中山間地域への支払金などを活用した地域づくりが進むが、5年、10年先の見通しはなかなか立たない。

 最大の課題は、集落で大半を占める高齢者、1人暮らしの人をどう支えるか。民間ビジネスは採算が取れない。行政や、介護保険によるサービスの隙間を埋めていく支援が求められている。

 北上市口内町の取り組みがヒントになろう。地元でNPO法人をつくり、交通の足がない高齢者らを自家用車で運ぶ。片道100円など「有償」なのがポイントだ。

 9年前から始め、利用者は増えている。でも悩みはある。「ドライバーも高齢化して動ける人は限られる。人の確保が難しくなった」と菅野豊志理事長は語る。

 課題は多いが、明日の集落の姿ではないか。助け合いとコミュニティービジネスを組み合わせ、「事業」として成り立たせる実例だ。

 東日本大震災の後、本県被災地ではさまざまなコミュニティービジネスが生まれた。それらも生かしつつ、地域を維持するための新たな仕組みができないか。

 人口半減社会を悲観的に見るのではなく、人々が心豊かに生き抜く地域づくりの機会と捉える。そのために、行政の縦割りを取り払った仕組みをつくりたい。

(郷右近勤)