東日本大震災から8年となる2019年は、三陸・釜石にとって特別な年。3月に三陸鉄道リアス線が全線開通、6~8月に三陸防災復興プロジェクト2019、9~10月にラグビーW杯が開催される。三陸・釜石に世界中の注目が集まるこの機会に、釜石から、三陸から、そして東北全体から「ありがとう」の気持ちを発信する活動が「#Thank You From KAMAISHI」。ビッグイベントに備えて、復興支援への感謝を伝える動きを紹介する。

(この企画は10回続き)

歌詞の一字一句をかみしめるように合唱練習に取り組む児童生徒

児童生徒の思いを歌詞に 市内全校で練習重ねる

 釜石市内の小中学校全14校の代表者による「かまいし絆会議」は、震災復興への感謝の歌「ありがとうの手紙♯Thank You From KAMAISI」を作った。震災後の子どもたちの経験を基に、復興支援に想いを寄せてくれた世界中の人たちや、身近な人への感謝の想いを歌詞に込めた。同市を会場に9~10月に開催されるラグビーW杯に合わせて披露することを目標に、各校で練習を重ねている。

 「ありがとうの言葉だけじゃ この想いは伝えきれないよ-」

 釜石中で昨年末に開かれた第2回の同会議。前向きな気持ちにさせる明るいメロディーに乗せ、約8分間に及ぶ大作が発表された。子どもたちは自分たちの感謝の気持ちが形になった喜びをかみしめるように、笑顔で練習に取り組んだ。

 歌作りは、昨年6月に本格スタート。これまでに計4回の専門部会を開き、歌の意義などの議論を重ねてきた。震災当時まだ幼かった子どもたちは、それぞれの記憶をたどり、震災の被害や支援のありがたみに理解を深めてきた。

 こうした活動でまとまった歌の目標は「支援者や大切な人に感謝を伝えること」。歌詞は14校の児童生徒から“大切な人への手紙”として集めたフレーズを基に制作。1番は震災後に想いを寄せてくれた世界や日本中の人たち、2番は仲間や友人、3番は家族-に向けた内容となった。

 歌詞を編集した盛岡市の広告制作会社ベアーズ企画製作室社長の下山和也さんは「子どもならではの表現をふんだんに使った。率直さが伝わる歌詞となった」と説明。作曲を担当した同市の作曲家・佐藤将展さんは「子どもたちの言葉の数々に感動した。言葉の力とリズムを生かし、感情を込めて歌いやすい音域で仕上げた」と狙いを語る。

 今後はW杯の関連イベントでの発表を目指して各校で練習を重ねるほか、合唱の様子などを盛り込んだPRビデオの制作も行う。専門部会リーダーの小澤大地さん(釜石中2年)は「歌を通じて世界中に絆を広げたい。後世に歌い継がれる歌にしていきたい」と意気込む。

「ありがとうの手紙 ♯Thank You From KAMAISHI」

作詞:かまいし絆会議、下山和也 作曲:佐藤将展

ありがとうの言葉だけじゃ この想いは伝えきれないよ
もしも言葉に翼が生えたなら あの空の向こうへ 今すぐ届けたいよ

僕たちがまだ小さかった頃 この町に悲しみがやってきました
灯りも笑顔も失ったとき トラックに乗って 世界中の想いが届いたんだ

顔も名前もわからないけど みんなが応援してくれました
あたたかい気持ちは絆となって 釜石の町に たくさんの希望が生まれたよ

ありがとう ありがとう ありがとう 何度言っても足りないよ
ありがとう ありがとう ありがとう ずっとずっと忘れないよ

あなたが背中を押してくれたから 僕たちは未来へ進めるんだ
もしもこの歌あなたに届くなら あの海の向こうへ 精いっぱい歌うよ

「みなさんの想いを 僕たちは忘れません」

いつも一緒にいて励ましてくれた その笑顔と温かい手が大好きだ
悲しみ苦しみ消えないとき ともにいた仲間が 僕に勇気をあたえてくれたんだ

もしも明日会えなくなっても 笑い合える日々はきっと続くよ
いつもは恥ずかしくて言えないけど 仲良しの君に 今日こそはちゃんと伝えたいよ

ありがとう ありがとう ありがとう 何度も相談に乗ってくれて
ありがとう ありがとう ありがとう ずっとずっと友達だよ

ありがとうの言葉だけじゃ この想いは伝えきれないよ
もしも言葉に翼が生えたなら 君の住む町まで 今すぐ届けたいよ

「君と過ごした日々は 最高の宝物だよ」

美味しい朝ごはん いってらっしゃいの言葉 当たり前だけど当たり前じゃない毎日
たまにはけんかもするけれども 本当はいつも思ってるよ 大切な 存在だってこと

僕はまだ子供だから 感謝の袋が ちょっと小さいみたい
これまでの「ありがとう」を詰めたら 袋からあふれて どんどんあふれてこぼれちゃうよ

お母さん お父さん ありがとう いつもそばにいてくれて
おばあちゃん おじいちゃん ありがとう ずっとずっと大好きだよ

大変な時に育ててくれて 守ってくれてありがとう
照れくさくて言えないけれど 大切な家族へ いつもありがとう

「これからも一緒に 手をつないで歩いていこう」

ありがとうの言葉だけじゃ この想いは伝えきれないよ
もしも言葉に翼が生えたなら あの空の向こうへ 今すぐ届けたいよ

ありがとうの言葉だけじゃ この想いは伝えきれないよ
もしもこの歌あなたに届くなら あの海の向こうへ 精いっぱい歌うよ

「これからは僕たちが 釜石の未来をつくる つくる」

Thank you from KAMAISHI!

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街の元気をこの手で イベント企画の宮川さん

「自分たちで街を盛り上げていきたい」と語る宮川徹さん

 釜石駅周辺のにぎわいを創出しようと、駅前祭り実行委員長の宮川徹さん(46)=釜石市・和の膳みや川店主=が奮闘している。昨夏に初開催した夏祭りのノウハウを生かし、三陸鉄道リアス線開通やラグビーW杯などに向けたおもてなし活動を計画。「今年は釜石にとって一生に一度の出来事がある。絶対に盛り上げたい」と熱く語る。

 宮川さんは釜石にとって“本番”となる今年を見据え、昨年7月に夏祭りを企画。「街の将来のためにだれかがやらなければ」と、行政の補助金に頼らず駅周辺の事業所を1人で回って出店や協賛を呼び掛けるなど、苦労して開催にこぎ着けた。

 当日は、約40事業者がブース出店。音楽ライブも盛況だった。市内の他団体との連携が生まれるなど、活動の輪も広がった。

 飲食店を切り盛りしながら頑張る宮川さんの熱意は行政も動かし、3月23、24日に予定する三陸鉄道リアス線の開通イベントは、市と共同開催することになった。

 「三鉄やW杯をきっかけに、この街を元気にするには、自分たちが動かないといけない。駅に来た人に『また釜石に来たい』と思ってもらえるようなイベントにしたい」と企画を練る。