20年ほど前、通っていた碁会所に中国出身の女性が訪ねてきた。子どもに囲碁を教えてほしいという。現地では囲碁がブームで「頭が良くなる」などと言いはやされていたらしい

▼1980年代、国際棋戦が始まったころは日本が常勝だった。しかし、韓国や中国が台頭してくるにつれ勝てなくなった。両国に共通しているのは幼少時からの教育が充実していて、次々と若い俊英が現れることだ

▼低迷していた日本にもスーパースター候補が誕生した。史上最年少でプロ初段となる仲邑菫(なかむら・すみれ)さん。4月1日のプロ入り時に10歳0カ月。父親がプロ九段という囲碁一家に生まれ囲碁漬けの日々で実力をつけた

▼異例の若さでプロになれたのは、世界で勝てる棋士の養成を目指して新設された「英才特別採用推薦棋士」制度によるものだ。タイトル保持者らが打った碁の内容を審査して合否を決める

▼プロになるには原則、養成機関に入り、そこで勝ち抜くことが必要。日本の戦後教育は平等を旨としてきたが、伸びる可能性がある人材には環境を与えて徹底的に鍛えるというエリート教育も必要ということだろう

▼「公平ではない」との声が出ることも考えられる。人生の七味唐辛子(恨み・つらみ・ねたみ・そねみ・嫌み・ひがみ・やっかみ)で、逸材がつぶされないよう周囲が守っていく必要もある。